占冠

  • 夕刊時評, 苫1面
  • 2025年2月12日

 混んだ飲食店のカウンターの向こうから若い女性客が板前さんに大きな声で尋ねる。「『占冠』って『しめかんむり』って読むんですかァ」。何度か、テレビ広告で見たやりとり。コロナ禍がヤマを越しにぎわいの戻った繁華街の光景。ヒソヒソと隠して話す時代は変わった。

 「旅の恥はかき捨て」とは思いつつも土地の歴史や産物など正確な知識を少しずつでも学びたいと思う。北海道は先住のアイヌ民族が山や川にアイヌ語の地名を濃密に残し、後に入植した和人がその音に漢字を当てて伝えて来た土地。末尾に内(ナイ)や別(ベツ)と、川や沢の名を付けた地名の何と多いこと。山田秀三著「北海道の地名」を開けば豊かさはさらに広がる。占冠には「川岸にヤチダモが多い、静かで平和な上流の場所」という捉え方もあるそうだ。もっともっと深い大きな意味を含んだ言葉が北海道の各地に埋もれているのかもしれない。

 ランコという木の名前を何十年か前に教えられたのは春。ぬれたように光る円い若葉を並べたカツラだった。アイヌ語では「~のある」の意味の「ウシ」を末尾に付けるとランコシになる。千歳市の蘭越や後志管内蘭越町の名が浮かぶ。苫小牧の川筋にも多い樹種。暖かくなったら若葉を探しに出掛けてみよう。(水)

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