「4番」と共に長嶋茂雄の代名詞だったのが「サード」。初めは遊撃手だったが、腰高で失策が多く、高校3年の試合で監督に三塁を守れと言われたのが転機になった。強打を鮮やかにさばけば観客受けする三塁は、長嶋の性格に合い、たちまち気に入る。立大で砂押邦信監督の猛ノックを素手で捕る特訓を受け、基本をたたき込まれた。
プロでは2186試合のうち2172試合で三塁を守った。ほかは18試合で遊撃、1試合で外野を守っただけ(試合中の守備位置変更を含む)。猛ゴロに飛びつき、矢のような送球。華麗なランニングスロー。ショーマンシップがあふれる、「派手に捕って派手に投げる」守備でファンを魅了した。
「捕ったら終わり」だからと、フライの処理は好きではなかった。三遊間のゴロは横取りするように捕るのに、飛球が上がると、遊撃手の黒江透修に「クロちゃん、行ってよ」と声を掛けたという。三塁の別名「ホットコーナー」は長嶋のためにあるような言葉だった。