苫小牧市内の小学校では近年、運動会の短距離走で順位付けを行わない学校が増えている。運動そのものを楽しむ意識付けや、他者との比較ではなく自らの目標に向かって努力する姿勢を育むことが狙い。ジェンダー意識への配慮から男女一緒に走る学校も出てくるなど運動会の多様化が進んでいる。
苫小牧民報の調べでは、義務教育学校を含む市内の全23小学校のうち約4割に当たる9校が短距離走で順位付けを行っていない。この動きはコロナ禍の2020年度に始まったが、各校の考え方はさまざまだ。
若草小は「順位に意識を向けるのではなく、体を動かす楽しみを感じてほしい」と昨年度から順位付けをやめた。拓勇小も順位を付けずに個々のタイムを記録することで、運動への興味関心を高めてもらう考えだ。
錦岡小はジェンダーについて、児童の中に多様な意識があることに配慮し、今年度から短距離走を男女混合で実施。男女の筋力差を考慮し、順位付けも取りやめた。緑小は児童数の減少で学級数が減ったため今年度、全校児童が紅組、白組、黄色組に分かれて得点を競い合う組対抗形式を廃止。これに伴って短距離走も着順採点もなくなったことから、「順位付けの必要性がない」と判断した。
運動会の在り方そのものを見直し、児童が主体的に学ぶ力を育むことに力点を置く学校も。北光小は今年度、勝ち負けや得意、不得意にかかわらず、一人ひとりが楽しいと思えるような学校行事を目指し、児童が自ら選んだり、決めたりする場面を多く設定する。短距離走は自分で走る距離を決めてチャレンジする新たな試みに着手。異学年種目も初めて企画し、行事名も「運動祭」に改めた。
清水小も子どもの主体性を育む観点から今年度、行事を運営する「係活動」を児童が中心となって計画したり、上級生が下級生に踊りを教えたりといった活動を取り入れている。短距離走の順位付けや紅白対抗形式は続けており、「見た目は今までの運動会と変わらないが、教員主体の行事から児童主体にコンセプトを変えた。どうあるべきか、今後も検討を重ねたい」と語る。
今年度は従来通りの運動会を継続する学校の一部も、男女混合での短距離走実施など、話し合いを重ねている。
市教育委員会の東峰秀樹参事は「学校現場では子どもが主役の学びを重視しており、その流れの中で一人ひとりが輝ける運動会の在り方が検討されている」と説明。「各校で運動の楽しさやみんなでやり遂げた充実感が得られるような工夫を取り入れており、その一つが短距離走の見直し」としている。