白老アイヌ協会(山丸和幸理事長)主催のアイヌ語話者育成講座が3日、白老町高砂町の白老生活館で始まった。受講者14人(オンラインを含む)が、協会会員の早坂駿さん(35)から発音の基本を学んだ。
アイヌ語は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の絶滅危機言語レッドブック(2009年2月発表)で、国内で唯一「極めて深刻な消滅の危機にある」とされた言語。固有の文字を持たないので片仮名やローマ字で表記され、統一的な正書法はない。会話では音を正確に聞き分け、再現する力が求められる。
この日は「サプ」「サッ」「サク」など、わずかな音の違いを中心に練習した。早坂さんは口の中の構造や舌の位置を示しながら「(サの発音は)サッカーのカーを言わずに止めるイメージ」と日本語の言い回しを借りながらアイヌ語の音素に意識を導いた。
唇を閉じて声を止めると「サプ」、舌を歯の裏に当てると「サッ」、口の奥にある軟口蓋に当てると「サク」となり、受講者はそれぞれの音を聞き分けたり、声に出したりして確認した。
発音の差異を体感的に学ぶため「どの音を言ったか」を当て合うクイズも実施。早坂さんが一音を発すると、参加者は耳と口に神経を研ぎ澄まし、挙手した。正解がそろうと「ピリカ(いいね)」とたたえ合い、教室に笑いと拍手が広がった。
講座の開講は、国のアイヌ政策推進交付金を活用して実現した。日常的に話せるレベルまで4年をかけて育成し、アイヌ文化全体の理解促進と継承を目指す。今年度は6月から来年3月までの開講を予定している。