本州では梅雨入りが続々と発表され、じめっとした天気になりやすい6月。梅雨は、気象庁による定義で「晩春から夏にかけて雨や曇りの日が多く現れる期間」とされています。この時期は南からの暖かく湿った空気と北にある冷たく湿った空気、性質の違う二つの空気が日本付近でぶつかり合うことによって雲が発生しやすくなり、本州などに雨を多く降らせます。この空気がぶつかる所にできる前線が、梅雨前線です。
ただ、昔から「北海道には梅雨がない」といわれるように、北海道では気象庁による梅雨入り・梅雨明けの発表は行われていません。しかし、北海道でも梅雨のような天気になる年があると実感している方は多く、明確な定義はないものの「蝦夷梅雨」という言葉もよく耳にしますよね。では、蝦夷梅雨とはいったい何なのでしょう。
本州などに梅雨をもたらす梅雨前線は、停滞したりしながら夏にかけてゆっくりと日本付近を北上していきます。7月後半にもなると、梅雨前線が北海道付近まで北上して道内でも曇りや雨の天気となることがありますが、これを蝦夷梅雨と呼ぶことが多くなっています。ただ、この場合は本州の梅雨のようにぐずついた天気が長続きするケースはあまり多くない上に、毎年決まって出現するわけではないので、本州の梅雨とは区別されているということです。
そして実はもう一つ、北海道にぐずついた天気をもたらすものがあります。それが、冷たく湿った空気を持つオホーツク海高気圧の存在です。春の終わり~夏にかけて北海道付近にオホーツク海高気圧が張り出すことで、道内には冷たく湿った空気が流れ込みやすくなります。この影響で、オホーツク海側や太平洋側東部の地域では数日にわたって低い雲や霧がかかり、弱い雨や霧雨となることもありますが、これを蝦夷梅雨と呼ぶ人もいるようです。
ただ、ここで注目したいのが、曇りや雨のぐずついた天気が続きやすいのは主に北海道の東側の地域で、風下にあたる西側の地域ではオホーツク海高気圧の影響が小さいということ。そのため、札幌や苫小牧周辺などに長年住んでいる方では春の終わり~夏にかけてのオホーツク海高気圧による曇天のイメージがない方も多いかもしれません。
さて、梅雨前線が北上するといよいよ本格的な夏がやってきます。今年の夏も暑くなると予想されているので、暑さ対策は早めに行ってくださいね。(気象予報士・防災士)