長嶋茂雄さんは5月下旬に肺炎が悪化し、同31日には重篤な状態になった。いまわの際でも「痛い」といった弱音を吐くことはなかったという。明るい人柄と前向きさ、不屈の精神は現役時代から変わっていなかった。
長嶋さんは2004年に脳梗塞を患い、18年には胆石の治療で入院した。過酷なリハビリを続け、晩年も車いすで東京ドームを訪れては巨人を激励。昨年11月のファン感謝イベントではグラウンドに登場し、ファンを喜ばせた。
次女の三奈さんは通夜の喪主あいさつで、松井秀喜さんと交わしたある約束を明かした。「監督やるやる詐欺」だ。まな弟子の松井さんが巨人の監督になるという雰囲気を出せば、「父はそれを楽しみにリハビリを頑張るので、100歳になるまで言い続けて」という狙いだった。
「父は野球を全うしたそのままの力で病と真正面から向き合い、決して諦めることはしなかった」。闘病生活を支えてくれた三奈さんへの感謝の気持ちもあっただろう。最後まで力を振り絞り、長嶋さんは6月3日に息を引き取った。最愛の娘の誕生日だった。