【シリコンバレー、ワシントン時事】トランプ米政権は9日、カリフォルニア州ロサンゼルス(LA)で激化した不法移民取り締まり強化への抗議デモに対応するため、現役海兵隊員約700人を現地に派遣した。一方、カリフォルニア州は同日、政権が発出した州兵の動員命令が違憲だとして提訴に踏み切った。
米メディアによると、カリフォルニア州に駐留する海兵隊が移動を始めた。政権が政府庁舎や移民当局者の保護を理由に州兵を配置すると発表した7日、ヘグセス国防長官が必要に応じ海兵隊を送る考えを示していた。
ニューサム知事(民主党)は9日、州兵動員命令は合衆国憲法違反だとして提訴したと発表した。憲法で規定された州知事の同意を得ず州兵を動かしたことは、州の主権の侵害行為だと主張した。
ニューサム氏は声明で「トランプ大統領が州兵を掌握できるようにするために仕組まれた危機だ。紛れもなく権威主義への第一歩だ」と非難した。
大統領が州知事の要請なく州兵を派遣したのは、公民権運動参加者の保護を理由とした1965年以来初めて。これに対し、ニューサム氏は地元当局が収拾に当たっており、州兵投入が事態を悪化させると判断した。今回の命令は米政府による「権限逸脱」で、裁判所に取り消しを命じるよう求めた。
トランプ氏は州の初動対応の遅れを批判。9日には記者団に「私(が担当者)なら(知事を)逮捕する」と述べた。今後の大統領選出馬に意欲的とみられるニューサム氏は、1月のLA山火事や関税政策を巡り現政権と衝突してきた。今回の問題でさらに対立は激化しそうだ。
移民税関捜査局(ICE)による不法移民の一斉検挙に抗議するデモは6日に始まった。デモ隊の一部はICE職員に暴力を加えたり、車両の放火や道路を封鎖したりするなどして暴徒化。50人超が身柄を拘束された。