前回のコラムで日本酒でも四季を感じられると書いたところ、取材先の左党から「とはいえ日本酒はやはり新酒」との声を頂いた。新米で醸造する新酒は冬に発売され、新鮮でフレッシュな味わいは、搾りたてならでは。冬こそ日本酒の旬、と主張するような口ぶりだった。
出来たて、焼きたてなど、とかく何かの「したて」を好む人は多いと思う。代表的なのはそばで、ひきたて、打ちたて、ゆでたての、いわゆる三たてが、おいしさの条件とされる。製粉したばかりのそば粉は香りも高く、職人の技を組み合わせることで、至高のうまさとなる。
苫小牧市内のスーパーで先日、割引シールが貼られた銘柄米を見つけた。米の価格高騰も一段落かと思いきや、精米日を見ると3月下旬だった。取材で以前、農家に聞いた話では、米がおいしいのは精米から1カ月程度。うずたかく積まれた割引米に、手は伸びなかった。
随意契約で放出された政府備蓄米の販売が市内でも始まった。「安い米」に長蛇の列ができ、市民からも喜ぶ声が聞かれるが、そもそも米の流通が滞ったり、価格が高騰したりした原因や、その責任の所在を明確にし、検証する必要があるだろう。政府による米市場介入への功罪を含めて、冷静に見詰めたい。(金)