派手さはない。だが、強い。女子63キロ級の嘉重が初出場で優勝。優勢勝ちした準々決勝以外はすべて得意の寝技で勝利を挙げ、「チャンスを生かし、冷静に戦うことができた」と満面の笑みを浮かべた。
2021年東京五輪銅メダルのボーシュマンピナールとの決勝は延長戦にもつれる展開。同じ寝技を得意とする相手にも「自分の形」を崩さず、最後は崩れけさ固めで抑え込んでけりをつけた。
パリ五輪後に採用されたルールでは「有効」が復活。抑え込みは10秒以上で「技あり」だったのが、5秒でもポイントになる。新ルールも追い風になった。
昨秋の講道館杯で初優勝。ひたむきに柔道へ向き合う姿が、塚田監督の目に留まった。「技術的には未知数だったが、ガッツの部分に『不可能を可能にする力』を感じた」。国際大会の派遣メンバーに入ると、結果を出し続けて一気に世界の頂点へと駆け上がった。
63キロ級は五輪3大会出場の高市が引退。28年ロサンゼルス五輪へ、新勢力の台頭が期待される中、最高のスタートを切った。「一つ一つ勝って、最終的にロスにつなげたい」。世界を制した武器に、さらに磨きを掛けていく。