完勝だった。男子90キロ級で初優勝を遂げた村尾は「僕にとって世界選手権の優勝がすごく重要だった。自分のパフォーマンスをしっかり出し切った」。確かな実力を示し、充実の表情で語った。
初戦の2回戦から準決勝までを一本勝ちして進んだ決勝は、大会連覇を狙った田嶋との日本選手同士の対決。長いリーチを生かした組み手で懐に入れさせず、足技や内股で揺さぶった。8分30秒に及ぶ戦いで終始ペースをつかみ続けて、相手を指導三つの反則負けに追い込んだ。
初出場した昨夏のパリ五輪ではあと一歩及ばず銀メダル。「ここで立ち止まっている暇はない。まだまだ強くなれると信じて日々やってきた」。悔しさをバネに2028年ロサンゼルス五輪に向け、再始動した。
昨年12月のグランドスラム(GS)東京で優勝。その後フランスに渡り、欧州クラブ選手権にも出場した。年明けは2月のGSバクーも制し、連戦連勝。「村尾三四郎の柔道を世界に見せてやろう」との言葉を胸に、さらなる強さを身につけて頂点まで上り詰めた。
「ここで終わらず、また次に向かってやっていきたい」。新王者は視線を先に向け、突っ走り続ける。