ウトナイ湖周辺では、湿原の女王と呼ばれるホザキシモツケのピンク色の花が見られるようになり、夏を感じる季節がやって来ました。初春から今の時期にかけて、多くの鳥たちは1年で一番大きなイベントである子育てに大忙しです。
冬の終わりごろにネイチャーセンター横の樹木に取り付けた巣箱には、シジュウカラが営巣し、親鳥が中で待つひなたちのために、餌となる虫を運び込む姿を観察することができました。早いときは数分置きに運んできて、荒天の日でも休まず餌を運ぶ親鳥の姿は、野生動物のたくましさをとても強く感じさせてくれるものでした。また、巣を出るときは内部を清潔に保つためにひなのふんをくわえて運びだす様子も見られました。
鳥たちは木の枝の上や草むらの中、川沿いの崖などさまざまな場所に営巣して子育てをします。今回は巣箱を利用したシジュウカラですが多くの場合、木にできた樹洞(じゅどう)で営巣します。樹洞というのは、木に開いた穴のことで、木が自然に腐ったり、アカゲラなどのキツツキの仲間が作ったりしてできたものです。
このような樹洞営巣性の鳥には、シジュウカラなどのカラ類の他にキビタキやオシドリ、フクロウの仲間などがおり、カラ類やキビタキはウトナイ湖周辺でもよく観察されます。また、鳥以外にもエゾリスやエゾモモンガのように樹洞をすみかや営巣場所として利用する野生動物もいます。樹洞は生き物たちにとって雨風を防いだり、外敵から身を隠す大事なシェルターの役割を果たしているんですね。
さて、上述のシジュウカラですが、6月下旬ごろには親鳥が巣箱に出入りする姿が見られなくなり、ひなたちは無事に巣立っていったようです。皆さんもこの夏、巣(家)を飛び出してウトナイ湖を散策してみてはいかがでしょうか。
散策中に樹洞を見つけたら、そこにすむ生き物のことを想像してみると自然観察がもっと楽しいものになるかもしれませんね。もし鳥たちが子育てしているようでしたら、近づき過ぎたりせずそっと見守ってあげましょう。
ネイチャーセンターは、土・日・祝日の午前9時半~午後4時半の開館で、鳥の巣の展示も行っています。スタッフ一同お待ちしております。
(日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ・荒川真吾レンジャー)