厚真町指定文化財に アイヌ文化関連品329点

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  • 2023年1月18日
厚真町の文化財に指定された出土品を紹介する乾学芸員
厚真町の文化財に指定された出土品を紹介する乾学芸員
鎌倉の御家人が使用していた腰刀
鎌倉の御家人が使用していた腰刀
国内最古とされている京都産の和鏡
国内最古とされている京都産の和鏡
墓から出土した副葬品の漆塗りの皿(膜片)
墓から出土した副葬品の漆塗りの皿(膜片)

 厚真町幌内地区で行われた厚幌ダム周辺遺跡群の発掘調査から見つかったアイヌ文化関連の出土品329点が、町の有形文化財に指定された。11世紀~16世紀紀末ごろの品で、アイヌ民族がこれまで空白の時期とされてきた約1000年前から伝統文化をつないできたことや、海を越えて北方、本州との交易的な活動を行ってきたことが分かる貴重な資料となっている。

 今回指定されたのは、2002年から16年にかけて行った厚幌ダムの建設事業に伴う発掘調査で出土したもの。昨年11月25日付で町から指定を受けた。

 約1000年前のたき火跡の周囲から発掘された擦文(さつもん)土器、青森県産の須恵器つぼ、平安貴族が使う朝鮮半島産の銅わんやきび団子などで、現在のアイヌ民族伝統儀式「カムイノミ」の源流と考えられる。約900年前の墓からは、擦文時代からアイヌ文化期につながる黒曜石なども見つかっている。

 また、約800~400年前の墓からは、道内最古とされる京都産の和鏡、金メッキの飾り金具を伴う鎌倉御家人の腰刀のほか、アイヌ民族の首飾り、福岡県産のガラス玉、ロシア産のメノウ玉など本州、東アジアと広い交易活動を示す高価な遺物も多数出土している。

 町教育委員会によると、「今回の指定物件はアイヌ民族の歴史の成立、変還過程において、空白の時代とされてきた時期のものを含んでいる」と学術的な評価の高さを指摘する。さらに想定以上の交易を行っていたことが分かり、厚真町の地の利を伝える貴重な資料でもあるという。

 町教委の乾哲也学芸員は「これまでアイヌ文化の歴史は700~800年前までしか追えていなかったが、今回の調査を経て1000年前の擦文時代までさかのぼって過程を追うことができた」とし、「町の指定を機会に、アイヌ民族の方々の誇りと尊厳、民族共生社会への相互理解へのさらなる促進に努めていく」としている。

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