駒大苫小牧高校野球部出身の投手工藤稜太(23)=信越硬式野球クラブ所属=が、10月に台湾で行われた第4回WBSC・U23ベースボールワールドカップに日本代表として参加し、3大会ぶりの優勝に大きく貢献した。最多タイの2勝と世界のマウンドで堂々たる投球を披露。「世界一は、その上がない特別な称号。すごく達成感があった」と歓喜の瞬間をすがすがしく振り返った。
年代別の世界タイトルを懸けた一戦には12カ国が出場。7イニング制で予選に当たるA、Bのグループ別オープニングラウンド、各組上位3カ国が進出するスーパーラウンド、順位決定戦が行われた。
日本は2016年の第1回大会優勝、第2回大会(18年)は2位、第3回大会(21年)は新型コロナウイルスの影響で参加を辞退していた。
今回は全国各地の社会人23人で構成。登別市出身で駒大苫高時代はエースとして春季北海道大会優勝に貢献。東海大札幌キャンパス時代には全国舞台も経験している工藤は、8月に仙台市内で行われた東北・北信越ブロックの選考合宿を経て見事メンバー入りした。
初登板はオープニングラウンド2戦目の対ベネズエラ。四回に2番手でマウンドに上がり「さすがに緊張するかなと思ったが、そうでもなかった」と持ち前の強心臓ぶりで三者凡退に打ち取り、勝利投手にもなった。
続く台湾戦こそ六回に4番手で登板し連打を浴びて1失点したが、初先発した南アフリカ戦では「ピンチになっても心の余裕を持って投げられた」と3回を4安打無失点で切り抜け2勝目を挙げた。
圧巻だったのはスーパーラウンドを共に4勝1敗で突破した韓国との決勝。工藤は0―0で迎えた三回に2番手で登板し「自然と気合が入った」と三ゴロ、見逃し三振、一ゴロの三者凡退。直球は今大会で最速の144キロをマークするなど「一番のピッチングができた」のはもちろん、同回裏の攻撃で味方打線が勝利をたぐり寄せる3点を挙げた。「チームを勢いづけたかった。三者凡退に仕留められたのは、すごく大きかった」と胸を張った。
自身の殻を破る貴重な機会になった。日本を率いた石井章夫監督は、1点を守り抜く従来の日本野球から脱却を目指し打者には長打、大量点意識の心掛け、投手には変化球などでかわす投球ではなく、直球で強気に攻めることを求めた。
多彩な変化球で打者を打ち取るスタイルだった工藤は「多少甘く入っても直球で押していく投球にチャレンジし続けることができた。新しい引き出しが増えた」と手応えを口にする。一方、目標とするプロ野球界入りに向け「もっと体を大きく、強くして球速も上げなければ」と世界一達成にもおごりはない。
現在は長野市に本拠地を置く信越硬式野球クラブで、1年目ながら投手陣の柱として活躍中。「プロになるために自分に何が必要かを追求していきたい」と不退転の決意を語った。