福井市にある市愛宕坂茶道(あたござかさどう)美術館の学芸員高島礼さん(50)が8日、白老町内に生える植物で、お茶の原料になるシソ科のエント(ナギナタコウジュ)の自生地を見学した。2024年3月から展開する北陸新幹線福井延伸開業記念特別展「日本茶々茶(ちゃちゃちゃ)お茶紀行 幻のお茶を訪ねて」で白老のエント茶も紹介するためで、「(このお茶について)深く伝えたい」と意欲を見せた。
同館の特別展では、日本各地の珍しいお茶9種類の魅力を、パネルや茶道具、資料などで紹介する。お茶は、高知大豊町特産の碁石茶(ごせきちゃ)や徳島県山間部特産の阿波晩茶(あわばんちゃ)、岩手県と宮城県をまたがる地域で飲まれている椿茶(つばきちゃ)などで、この一つにエント茶も取り上げる。
エントは、ナギナタコウジュのアイヌ語。日当たりの良い原野などで自生する一年草で、乾燥させた穂や枝には利尿、発汗などの効果があるとされる。アイヌ民族は、強い香りが病魔を遠ざけると考え、日常的に茶にしたり、かゆの香り付けに使ったりした。幕末に蝦夷地(北海道)を踏査した松浦武四郎(1818―88年)の日誌にも、アイヌ民族がエント茶を飲んでいたことが記されている。
高島さんは全国各地のお茶に詳しく、この日は白老町の女性たちでつくる「ポロトの母さんの会」の大須賀るえ子代表(82)の案内でエント茶の自生地などを巡った。
大須賀さんらはアイヌ民族伝統の野草茶であるエント茶作りに取り組んで今年で12年目。会員4人と自生地で手摘みを実演し、製造工程に関する講話やエント茶の試飲を行った。
高島さんは「エント茶の効能のみならず、アイヌ民族の精神文化も特別展でお伝えしたい」と目を輝かせ、大須賀さんも「アイヌ民族が自然を大切にして暮らしてきたことなどを紹介してもらえたら」と話していた。