▽全員で息を合わせる
夏本番を迎えた今月7日、むかわ町の宮戸小学校体育館では児童たちの力強い和太鼓の音が鳴り響いていた。
「ドーン」「ドンドン」「カッカッ」「カカッ」―。
全校児童が集まって行う今年度最初の練習だった。和太鼓に触れるのは、昨年秋の学習発表会以来。当時の感覚を取り戻すようにばちをさばいていくが、全員で息を合わせるのはなかなか難しいようでそれぞれ手応えと課題を共有した。練習を終えた5年生の斉藤雅莉佳さん(10)は「一番はみんなで合わせること。徐々に完成という形にしていきたい」と発表当日に向けて張り切っていた。
▽児童が地域で成果を披露
宮戸地区では例年8月23、24の両日、鵡川大漁地蔵尊境内で「鵡川大漁地蔵尊大祭」(通称イモッペ地蔵まつり)が開かれる。同校はここ数年、ステージイベントに出演し、全校児童が和太鼓の演奏とよさこいの踊りを披露するのが恒例になっていた。全校児童で地域に出向いて、学習成果を披露するまたとない機会であり、地域住民と交流を深める貴重な場にもなっていた。
同校OBで過去にPTA役員なども務めた経験がある三上純一さん(75)は、母校について「児童は少ないが、その分、学校と地域が一つになって活動していた。住民との絆はより深いものがあった」と話す。学校活動を離れた場面でも触れ合いはあり、「盆踊り大会の時には、地域の有志が太鼓の好きな子に、たたき方を特別に教えたりしていた。子どももその中で一生懸命練習していたよ」と振り返る。
▽最高のパフォーマンスを
イモッペ地蔵まつりではここ2年間、新型コロナウイルス感染拡大の影響でステージイベントや模擬店をしていなかったが、今年は開催する方向で準備が進んでいる。斉藤さん自身、このまつりで和太鼓を披露するのは3年ぶり。今の2、3年生は、学校以外で演奏や踊りを発表するのは初めてとなる。
直近2019年のまつりでは、ステージイベントのオープニングを飾り、児童たちが法被姿で元気いっぱいに和太鼓演奏とよさこいの踊りを披露し、地域の夏を盛り上げた。会場から「アンコール」とたくさんの拍手が起きた。多くの町民が見守る中での演奏は緊張したが、それ以上に「楽しかったし、うれしかった」と言う。
学校行事以外で練習の成果を発表する機会は、この夏のイモッペ地蔵まつりがおそらく最後になる。斉藤さんは「みんなで力を合わせ、心を一つにして演奏したいし、踊りたい」と目を輝かせる。三上さんも「やるのであれば、期待しているし、温かく見守ってあげたい」とほほ笑む。