札幌市の登山家、野村良太さん(27)が4月29日、北海道最北端の稚内市宗谷岬から南端の襟裳岬まで約670キロに及ぶ北海道分水嶺(れい)の単独完全踏破に成功した。一度も下山せず単独での達成は史上初めて。2月26日に稚内市宗谷岬を出発してから63日かけて襟裳岬に到着した。
野村さんは大阪府出身。北海道大学ワンダーフォーゲル部で登山を始めた。卒業後も数々の山に挑み、現在は江別市の山岳ガイド会社「ハローポーター」に所属し、山岳ガイドとして活躍する。
昨年3月にも南端から北上するルートで積雪期単独北海道分水嶺縦断に挑んだが悪天候などに阻まれ、途中で断念した。2度目の今回は、積雪状況なども踏まえて北端から出発する計画を立てた。宗谷丘陵、北見山地、石狩山地、日高山脈と北海道の奥深い山々を一つなぎに分水嶺に忠実に南下した。今回の挑戦でも自然の厳しさに直面。北見峠付近のチトカニウシで猛吹雪に見舞われるなどしたが、困難を乗り越えて着実に歩みを進め、踏破を成し遂げた。
襟裳岬には、登山仲間ら30人以上が道内各地から駆け付け、野村さんの踏破達成の瞬間を見守った。
大学時代の後輩という苫小牧市の会社員、別当屋敷大樹さん(25)は「(野村さんは)失敗しても挑戦し続けると思っていた」とたたえた。
野村さんは「この計画に必死だったので当面は余韻に浸りたい。北海道は大きかった」と話しながらも、「山なしには生きていけない。帰ってきたらまた行きたくなる」と新たな登山計画に思いを巡らせている。