昨年11月に埼玉県から白老町に移住したアイヌ民族文化伝承者、宇梶静江さん(89)主演の記録映画「大地よ!」の上映会開催に向けて、実行委員会が同町で旗揚げされ、初会合が1日、町中央公民館で開かれた。関係者約30人が出席し、5月21日午後2時から同館で上映することを決め、当日まで力を合わせて準備を進めることを確認した。
「大地よ!」は、同名の宇梶さんの自伝を基にした約90分の記録映画。主演の宇梶さんは浦河町出身で、23歳で上京。関東地方のアイヌ民族4団体でつくるアイヌ・ウタリ連絡会代表を務めた。映画ではアイヌ民族への差別や偏見と闘う運動に奔走したことなどを伝え、東京都新宿区の藤原書店が企画・制作、金大偉さんが監督を務める。現在、完成に向けて編集作業が続けられているという。
実行委は、町、白老アイヌ協会らでつくる組織。
初会合では、同作品でプロデューサーを務める藤原良雄氏が「上映を通してアイヌのアイヌによるアイヌのための文化を、白老から生み育てていきたい」とあいさつ。宇梶さんは「大地は多くの食べ物や哲学を授けてくれる母のような存在。畏敬の念を呼び起こされるこの町で、命の尽きるまで生き続けたい」と話した。
実行委員長に戸田安彦町長を選出。上映会に向けて実施する関連イベントを検討し、宇梶さんら関係者が撮影秘話を語るトークショー、白老や宇梶さんの出身地である浦河のアイヌの歌と踊りの交流、若い世代との意見交換会―など、さまざまな案が出された。ゴールデンウイーク前後に第2回会合を開き、内容を詰める。
実行委の旗揚げに向けて各地の関係者に声掛けするなど世話人を務めた白老アイヌ協会の山丸和幸理事長(73)は、「みんなの力を借りながら、上映会を成功させたい」と意気込んでいる。