白老町は、町高砂町に多機能型生活館を2024年度に開設する方針だ。老朽化が進む白老生活館(高砂町)と白老中央生活館(大町)を統合し、建て替える。整備に向けて22年度は施設の実施設計に取り掛かり、現白老生活館を解体する。新施設には儀礼で使ういろり付きの部屋を設けるなど、白老アイヌ文化の伝承・発信拠点の役割を持たせる。
白老生活館(木造平屋建て、面積293平方メートル)は1962年、白老中央生活館(同374平方メートル)は77年に建設。町内会やアイヌ関係団体の集会、文化サークルの活動に利用されてきたが、いずれも完成から40年以上が経過し、耐用年数を超えている。このため、町は人口動向や施設の利用状況、アイヌ文化振興といったさまざまな観点から2施設を統合し、伝統文化の発信と地域交流の機能を併せ持つ新しい生活館の整備を決めた。
建設場所は、白老生活館東側の町有地。木造平屋建て、面積600平方メートルを想定し、現施設の2倍の大きさとなる。整備地はかつて白老コタンがあった場所で、アイヌ民族の子どもが通った小学校や、”コタンのシュバイツアー”と呼ばれた故高橋房次医師の病院の跡地が近くにある。白老のアイヌ民族と深い関わりがある土地のため、地元アイヌ文化の伝承・発信拠点としての機能を備えた新生活館の建設地にふさわしいと判断した。
改築方針によると、施設にはいろりや神窓を設けた儀礼室、木彫や刺しゅうなど伝統民具の展示スペース、アイヌ料理などが作れる調理室、各種サークル活動や住民交流に使う研修室などを配置する。22年度に実施設計と現白老生活館の解体を行い、23年度に建設、完成させて24年度のオープンを目指す。建設事業費は約3億円と見積もる。
白老アイヌ文化をめぐっては、民族共生象徴空間(ウポポイ)の整備でポロト湖畔にあった旧アイヌ民族博物館が18年3月で閉館し、伝承活動の拠点を失ったことから、それに代わる場を求める声が関係者から出ていた。町が整備する多機能型生活館は、儀礼や古式舞踊、手工芸など地元伝統文化を継承していく場として機能させ、「町内会やサークル活動など住民交流に利用してもらうほか、アイヌの方々の心のよりどころとなる施設を目指したい」としている。
一方、白老中央生活館については、26年度中に廃止する方針という。