白老町で看護師の女性2人が、地域住民のコミュニティナースとして活躍している。「町のよりそいナースらっこ」のグループ名で、イベント会場などさまざまな場所に出向いて健康相談に応じたり、血圧測定を行ったりと奉仕の活動を続けている。住民の半数近くが65歳以上の高齢者という町と向き合いながら、「町民の元気を支えたい」と張り切っている。
2人は、苫小牧市に住む川田幸香さん(37)と、白老町出身で札幌市在住の須貝夢乃さん(25)。川田さんは苫小牧の訪問看護事業所、須貝さんは札幌の病院に勤め、白老町に通いながら活動に取り組んでいる。
コミュニティナースは、住民が集まる場所へ出向いて相談対応に当たるなど、健康づくりを支援する医療人材。自治体の地域おこし協力隊員、訪問看護事業所や福祉関連のNPO法人職員、ボランティアといったさまざまな形態で活動する。自治体の保健師や事業所の訪問看護師らがカバーし切れない領域へ入り込み、必要に応じて医療福祉機関との橋渡し役も担う。島根県雲南市など施策として積極的に導入するまちもあるが、人材はまだ数少ない。
コミュニティナースに関心を抱いた川田さんは2019年から、縁のある白老町でボランティア活動を開始。賛同した須貝さんも加わり、20年にグループを立ち上げた。血圧・血中酸素濃度測定や健康・介護相談、認知症チェック、安全な入浴方法の助言といった無料のメニューを用意した「まちの保健室」をイベント会場に設け、住民の健康維持をサポートしている。
2人の取り組みは徐々に知られるようになり、活動の幅も広がりを見せる。昨年9月から毎月、地元NPO法人ウテカンパ(田村直美代表)がカフェ・ミナパチセ(町社台)で開く女性サロン「ラポラポ」で健康講座を実施。今月15日の同講座は「心の健康」をテーマに開き、体の健康を守るために心の元気を維持する大切さを伝えた。公民館を会場にした移動サロンや子ども食堂にも参加し、相談に応じている。
ふるさとのためにと、須貝さんも毎月8回ほど札幌から白老に戻り、アヨロ温泉(虎杖浜)で「まちの保健室」活動を行ったり、観音寺(同)の米本智昭住職の檀家(だんか)回りに参加し、家庭で相談対応や指導に当たったりしている。
コミュニティナースは、報酬を得る仕組みや行政支援が社会的に整っていない。このため、認知度はまだ低く、人材は道内にもほとんどいない。しかし、川田さんは「高齢化社会の中で、領域を地域全体とした自由度の高い健康づくり活動は重要になっていくはず」と強調し、「支援の手が届いていない人たちをサポートできれば」と話す。須貝さんも「活動を通じて人と人がつながるコミュニティー再生の役目も果たし、郷土が元気になるよう頑張りたい」と意気込む。