白老町議会の「人口減少に対応する政策研究会」(大渕紀夫座長)は、人口減対策の調査研究活動の成果として町への政策提言を取りまとめ、17日に戸田安彦町長に提出した。提言では、移住・定住を促す魅力ある地域づくりに向けて、地域おこし協力隊員の積極的な採用と支援体制の充実を図るよう求めた。
研究会は、人口減少に歯止めをかける方策について調査研究する議会組織。委員は座長を含めた町議8人で、昨年6月に設置した。調査研究のテーマは「地域おこし協力隊」に設定。協力隊員の活動は魅力あるまちづくりに貢献し、移住・定住の促進にもつながるとの考えからだ。研究会は地元協力隊員との座談会、協力隊制度を地域振興に生かす先進地の視察、町内企業の従業員らを対象にした移住・定住の意向調査などを行いながら、政策の在り方を議論。計30回の研究会開催の成果をまとめ、町に政策提言として提出した。
提言は、▽支援体制の充実▽地域課題とのマッチング▽協力隊の活動環境の充実▽協力隊の認知度向上▽予算枠の拡大―の5点。最大3年間の任期の終了後を見据えた支援体制の充実や隊員の積極的採用を求めた内容で、農畜産業や漁業といった主要産業の担い手育成を意識した隊員募集なども提言した。
また、隊員活動に対する町民の理解を促すため、情報発信の強化や町内会・関係団体との交流機会を求めたほか、空き家や町有住宅を活用した隊員への住宅支援も盛り込んだ。
白老町では2016年に協力隊制度を導入し、これまでに17人を隊員に採用。現在、観光や文化芸術、アイヌ文化、森林ガイドなどの分野で20代や30代の6人が活動し、地域資源を生かした商品開発や特色ある民泊施設の開業などさまざまな事業を創出している。任期を終えた元隊員も白老で宿泊・飲食などの事業を続けたり、シェアオフィスなど新たなビジネスを生み出したりして地域振興につなげている。
そうした活動は、白老の魅力向上や雇用創出など地域経済活性化に成果をもたらしている一方、支援体制の面で課題も残る。大渕座長は「20代の隊員の定住率が極めて低く、また隊員と町民の関係構築も課題」と指摘し、「人口減少時代に対応したまちづくりを進める上でも、隊員制度の効果を最大限に発揮させる支援施策が必要だ」と強調する。
提言を受けて戸田町長は「隊員活動の環境整備に力を入れるなど支援の充実を図っていきたい」と述べた。
白老の人口は1985年の2万4353人をピークに減少が続き、現在1万6000人にまで落ち込んだ。人口減は加速度的に進み、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、2040年に9000人程度になると推計する。財政を縮小させ、地域の活力を奪いかねない人口減への対応は、白老にとっても極めて重い課題。大渕座長は「調査研究の新たなテーマを設けて活動を続行し、人口減を抑制する政策をさらに提言していきたい」と言う。