白老町虎杖浜で8~10月に開催された屋外写真展の作品を残そうと、地域住民が保存の活動を進めている。昭和30~40年代の虎杖浜を捉えた巨大写真を海岸通りの建物壁面に飾り、漁師まちとして活気に満ちた往時の風景を出現させるイベントには、各地から多くの人が足を運び、好評を得た。住民有志らは11月に保存会を立ち上げ、「作品を地域振興に生かしたい」としている。
屋外写真展は、町民やアーティストでつくるウイマム文化芸術プロジェクト実行委員会(星貢委員長)と文化庁が主催し、8月27日から10月11日まで開いた。写真は王子製紙苫小牧工場カメラ会に所属していた山崎壽昭(としあき)氏(1927~2015年)の作品。拡大印刷し、海岸通りにある元水産加工場や倉庫、空き店舗などの壁15カ所に20点余りを展示した。廃墟の建物にも飾り付け、過ぎ去った時代を懐かしむ雰囲気を演出。縦と横の長さが8メートル前後あり、遠くからも目を引く巨大な写真も掲げ、海岸通り全体を作品化した。
水揚げされた魚を籠で運ぶ人々、荒れる海から戻った漁船をロープで浜へ引き揚げる漁師―など、海と共に生きた人々の営みを記録した写真の展示会には、各地から大勢の人が鑑賞に訪れた。半世紀以上前の懐かしい光景をまちに出現させた写真展は、住民の間でも話題を呼び、保存を求める声が出た。このため、地元で水産加工業を営む蒲原亮平さん(36)や観音寺住職の米本智昭さん(38)ら住民有志は、作品を残して観光資源に役立てることを模索。展示場所を提供した建物の所有者らも賛同し、活用へと動きだした。
有志らは11月末、主催者側の理解を得て展示したままにした写真の表面に、ローラーで保護材の特殊塗料を塗る作業を実施。大型作品の作業では高所作業車も使用した。材料費などは、有志らが取りあえず自費で賄ったものの、作品の維持を地域全体で支えてもらうため、住民や事業所に寄付金の協力を呼び掛けている。
保存活動に取り組む蒲原さんは「写真を残したいという声をたくさん耳にした。町内外から虎杖浜へ訪れる人を増やすためにも、作品を活用していきたい」と話し、「今後、展示作品をさらに充実させ、地域活性化につなげたい」と意気込んでいる。