新型コロナウイルスの北海道への緊急事態宣言が解除された21日、休業や営業時間を短縮していた苫小牧市錦町、大町の飲食店が夜の営業を再開した。常連客や店主が会話を楽しむ光景が広がったが、感染防止に細心の注意を払いながらのスタート。市道一条通と二条通ではまだシャッターを閉めている店が見られ、人の姿もまばら。以前のように十数人の団体客はいない。影響が長びく夜の歓楽街を歩いた。
(報道部・室谷実、松原俊介)
午後6時半ごろ、大町の居酒屋夕膳に入った。経営者の伊藤芳子さん(73)や家族が、続々と来店する客と「しばらくぶりだね」「何してたの」と言葉を交わした。8年ほど前から通う矢代町の会社員小嶋徹夫さん(68)は「再開を心待ちにしていた。ここは刺し身やおでん、何でもおいしい」と笑顔を見せた。
コロナ禍で事業所や団体の宴会利用がほとんどない状態が続く。5月16日から1カ月以上休業し、伊藤さんは「仕事がなくてすごくつらかった。冬には忘年会や新年会が開けるようになってほしい」と願う。
大町の居酒屋izakaya草―sou―は、宣言解除が決まってすぐに入った予約客や常連客でほぼ埋まった。宣言中はランチ営業を続け、テークアウトメニューも充実させた。佐藤伸也店主(36)は「通常営業に戻ったが、札幌市で感染拡大が続いている以上、手放しでは喜べない。人が戻ってくるのはまだ先ではないか」と案じる。
午後8時ごろ、大町のSTYLISH BAR mouの瀬野理沙店主(34)は「個人的には宣言延長もやむを得ないと思っていた。管内で感染者が出ているうちは自粛が続くのでは」と話した。宣言期間中の6月は、週末限定で昼間に営業してしのいだ。市のプレミアム付き商品券事業などで繁華街に客足が戻ることを願う。
来店した市内在住の会社員男性(28)は「解除後の初日だったので、まちの様子を見に来た」という。宣言中は巣ごもり生活を送っていた。「久々に飲みに出られて楽しい」と笑顔を見せながらも「職場やランチでも感染が心配な場面を見掛けることがある。夜の街だけ締め付けが強いような気がする」と時短営業などへの疑問も口にした。
錦町のパブオールドファッションは、午後7時から翌日午前1時までの営業を再開した。午後8時ごろに訪ねると客はおらず、店主の伊勢康伸さん(54)が準備をしていた。宣言中の5月下旬から昼の営業を始め、予想以上の利用があったことから22日以降も定休日(木曜日)を除き、午前11時から午後3時の営業を続ける。それでも6月の売り上げは前年を下回りそうだという。伊勢さんは「外に出る人が増える雰囲気にはなっていない」と語った。