2018年9月に発生した胆振東部地震で自宅兼店舗が全壊し、仮設店舗で経営を続けてきたむかわ町のたい焼き店「いっぷく堂」が、町美幸2に新たな店舗を構え、24日に営業をスタートさせる。震災から2年9カ月余り、店主の工藤弘さん(68)は「皆さんのおかげでやっとここまで来られた」と感謝の思いを語り、「この場所で頑張ってやる」と再出発に決意を新たにしている。
いっぷく堂は、もともと仮設店舗と同じ町松風にあり、新聞販売店に併設する形で2015年7月にオープン。工藤さんが新聞販売をしながら、たい焼きを作ってきた。穂別地区で発掘されたハドロサウルス科の恐竜「むかわ竜」(通称)をかたどった「恐竜たいやき」を考案するなどで、町内外にリピーターを生む人気店となり、親しまれた。
しかし、自宅兼店舗は地震で全壊。工藤さんは町大原の仮設住宅で生活しながら、19年4月に仮設店舗で営業を再開した。その後、仮設店舗の退去期限が来年2月末に迫り、昨年11月末に引っ越した町美幸の住居の敷地内にある車庫兼倉庫を改修。店をオープンさせることにした。「本当は中央通りでやりたかったが、そうもいかなくて。幸いここがあったから」と迷わずに決めた。
店内には飲食スペースのほか、縫いぐるみなどの恐竜グッズの販売コーナーを設ける予定。21~23日の3日間は移転作業のため休業し、オープンに向けて一気に準備を進める。床の塗装などは工藤さん自らが手掛ける。クリーム色の建物の外壁には9月ごろをめどに全長8メートルのむかわ竜のイラストをあしらうほか、シャッターアートも考えているという。
新店舗は町役場庁舎の横で、道路を挟んで道の駅「四季の館」があるなど「場所も良いし、これで落ち着いて店ができる」と工藤さん。営業は午前9時30分から午後6時までだが、商品がなくなり次第終了する。「元気なうちは80歳を過ぎてもできる。病気などにならない限りは続けるつもり」と笑顔を見せる。