新型コロナウイルスの緊急事態宣言が20日の期限で解除されるかが焦点となる中、苫小牧市内では時短営業の飲食店だけでなく、関連する酒類販売店やタクシー・代行業界も苦境にあえいでいる。中小事業者向けの国の支援制度も要件が厳しかったり、額が少なかったりで頼みの綱にはならず、限界を訴える声は日増しに大きくなっている。
市内錦町や大町の繁華街は飲食店の休業が目立つ。業務用酒類販売のトモヒロ大町店(大町)は売り上げが例年の8~9割も落ち込んだ。友廣久之社長(62)は「飲食店の9割が休業し、関連業界全体が壊滅状態だ」と頭を抱える。
店の営業時間も通常より4時間短縮した。感染拡大防止に協力が必要な現状に納得しようとするが、「このままだと限界が来て、店を継続できない。それでも生活を維持し、生き残るために(飲食店の)皆さんと一緒にしのいでいくしかない」と苦しい胸の内を明かす。
福士商店(錦町)も、これまで1日20~30件ほどあった業務用の配達がゼロの日もあり、酒類の売り上げは例年に比べ7割ほど減少している。自宅で酒を飲む「家飲み」の一般客が訪れはするが、業務用の需要減を補うにはほど遠い。
昼夜を問わず中心部へ足を運ぶ人が少なくなり、同店で運営する駐車場の収益も激減した。福士徳彦社長(65)は「昨年1年間は1000万円以上の赤字が出た」と話す。コロナ禍による飲食店の閉店も相次ぎ、「感染が収束に向かっても、客足が以前のように戻るのか」と不安視する。
苫小牧観光ハイヤー(有明町)は5月16日の緊急事態宣言発令以降、繁華街への配車を希望する電話がぱったり途絶えた。今年は1月から同宣言前まで、売り上げが前年より少し増えていたが、6月は一気に4割減となった。
緊急事態宣言の影響で月間売り上げが5割以上減少した事業者に国が給付する一時支援金もあるが、酒井文仁社長(55)は「売り上げが50%を割っていたら会社がつぶれるレベル。タクシー業界で(要件に)引っ掛かる事業者はない」と首を振る。「緊急事態宣言が解除されれば、人流が戻る可能性はある」と20日に期限を迎える宣言の行方を見守る。
キャッツ運転代行(大町)は5月中旬から下旬にかけて一時休業し、同月末から営業を再開した。売り上げはコロナ前の9割減。それでも固定費の支払いや融資返済のため保有車14台のうち1~4台を稼働させる。
営業時間を短縮し、雇用調整助成金を活用するなど可能な限りの努力はしているが、板谷弘代表(67)は「ワクチン接種が進み、若者が外出しないとまちは潤わない。それまでどうつないでいくか」と綱渡りの現状を訴えた。