政府が進める新型コロナウイルスワクチンの「職域接種」について、苫小牧市内でも検討する動きがある。従業員の多い大手製造業は前向きな姿勢だが、医療従事者の確保など課題もある。ただ、市や市医師会(沖一郎会長)は協力に前向きで、官民挙げてワクチンの早期接種につなげる方策を模索している。
職域接種は政府が導入し、8日に受け付けがスタート。企業や大学などが自ら、医療従事者や会場を確保する。接種対象者は1000人以上が基本で、取引先や下請け、家族を対象にしてもよい。
9日の定例記者会見で岩倉博文市長は、必要な人員確保の課題を挙げ「現実問題としてはなかなか難しい」と前置きした上で、「これから20~30代の接種率が問題になると思う。企業が積極的にやってもらえたら」と期待。市は企業の相談も受けており、桜田智恵美健康こども部長は「市の接種と共に加速できたら。必要なサポートはしていきたい」と強調した。
職域接種で課題となる医療従事者の確保について、沖会長は「市保健センターに企業の従業員に出向いてもらい、センター看護師が接種する方式などを考えたい」と協力に前向きな考えを示す。来週中にも新たな体制の詳細を公表する考えだ。
接種対象1000人を確保できる市内企業も前向きな姿勢だ。従業員が市内最多3400人規模の自動車製造業、トヨタ自動車北海道(勇払)は職域接種を「検討している」としつつ、自治体接種に影響を与えないことが大前提のため「市と相談しながら対応を決める。接種が早く進むようにしたい」と話す。
日本軽金属苫小牧製造所(晴海町)も、従業員は日新、勇払の各拠点を併せて600人規模だが「家族や取引先も含めれば1000人になる」として、検討を進めている。従業員500人規模の王子製紙苫小牧工場(王子町)は「医療従事者の確保が課題」としており、市や市医師会の体制構築を注視する。