苫小牧市内でも医療従事者や65歳以上の高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種が加速しているが、これらの人たちに続く優先接種対象である介護従事者の接種は進んでいない。近隣自治体では高齢者施設で入所者と従業員の同時接種に取り組んでいるが、今月中に2回目の接種を完了するところもある。市内の介護従事者は「自分が感染源になってしまう不安が常に付きまとっている。接種開始時期の見通しだけでも早く教えてほしい」と訴える。
市は国の考え方に沿って、(1)医療従事者(2)65歳以上の高齢者(3)基礎疾患がある人・高齢者施設などへの従事者・60~64歳の高齢者―の順にワクチンの優先接種を計画。医療従事者は5月末までに7500人が2回目の接種を終えており、65歳以上の高齢者についても7月末までに完了させる方針だ。
高齢者施設などへの従事者はこれらの人たちに次ぐ優先接種の対象だが、市は介護従事者への接種への開始時期について明らかにしていない。
市内西部のグループホームで管理者を務める女性は「介護の現場では1年以上、神経をすり減らして感染を広げないよう努力しているが先の見えない生活に限界を感じ、離職する人も出ている」と指摘。「せめて接種開始時期だけでも教えてもらえれば、先を照らす光になるのだが」と漏らす。
家族を含む外部の人間が施設に立ち入れなくなり、入所者も外出を制限されている今、感染の媒介役となる可能性が最も高いのが介護従事者だ。このため、施設で高齢者に接種する際、従業員にも同時に接種するという自治体も少なくない。東胆振では苫小牧を除く白老、厚真、むかわ、安平の各町でその手法で、接種をスムーズに進めている。
グループホームなどを運営する市内の社会福祉法人の担当者は「近隣に接種完了間際の町もあるのに、苫小牧では時期すら示されないのはなぜか。このような状況下では高齢者施設への感染発生を防ぐことは難しい」と憤る。
一方、デイサービスなどの通所支援施設や訪問介護などについては、優先接種の対象とするかどうかの判断は各自治体に委ねられている。こちらについても、市は「検討中」として詳細を明らかにしていない。市内中心部でデイサービスを運営する男性は「通所施設は感染ルートが多岐にわたるため、クラスターの発生リスクは高い。優先接種の枠の中に入れてほしい」と訴える。
市内で訪問介護や居宅介護支援などを手掛ける事業所を運営する女性は「私たちは発熱のある人や、濃厚接触者としてPCR検査を受けた人などへの介護も継続して行っている」と打ち明け、優先接種の対象となることを願う。
市内のデイサービス施設でつくる団体や訪問介護、小規模多機能型居宅介護事業者などの有志が近く、優先接種の対象に加えてもらえるよう訴える要望書を市に提出。署名を集める活動にも乗り出し、介護現場の声を市に届ける考えだ。