北海道などに出されている緊急事態宣言について、政府が今月末の期限を6月20日まで延長する方針を決めたことに対し、苫小牧市民からは感染を抑えるために「仕方ない」といった意見が目立つ。一方、飲食店関係者などからは「どうやって店や生活を守ればよいのか」と悲痛な声が上がる。
しらかば町の公務員寺谷愛朱花さん(20)は国や道の要請を受け、職場でも感染拡大防止の一環でテレワークが導入されたといい、自らも28日から初体験。長引く外出や移動の自粛要請は「仕方がない」とした上で、「早く元の生活に戻ってほしい」と願った。
中国語を教える宮前町の大学講師馮一峰さん(28)は「授業がすべてオンライン化され、発音のレッスンは口元が見えて教えやすくなった」としながら「会話型では返答に時間差が生じてしまい、授業時間は減る」と教育の質の低下を懸念。「宣言延長は仕方ないが、直接学生に会えない時間が続くと思うと寂しい」と述べた。
市営住宅・若草団地の住民でつくる若草団地町内会女性部の橋本久美子部長(71)は「高齢者の孤立化がさらに深刻になる。町内会としてできることが思い付かず、真っ暗闇の中にいるよう」と吐露。月1回の茶話会も昨年3月から中止しており「いつまた、みんなで集まれるのだろう」とため息を漏らした。
16日の緊急事態宣言後、ランチ営業を始めた「和伊和伊炭焼酒場 こぶちゃん」(錦町)の店主中川泰博さん(60)は「自分の生活すら守れなくなりそう。協力はするが支援金がいつになるのかなど、説明が欲しい。このままでは希望を持てない」と嘆いた。
「店を始めて17年、こんなに寂しい錦町は初めて」と語るのは屋台通り錦町横丁の「串揚げや 串喜」の店主佐々木正明さん(72)。「テークアウトの常連さんには心から感謝しているが、アルバイトを探そうかと思うくらい厳しいのが現実」と打ち明けた。
業務用酒類販売のトモヒロ(明野新町)の友廣久之代表(62)は「16日の宣言時から売り上げは90%減。納入業者にも支援の目を向けてほしい」と訴えた。
カラオケ喫茶ゼロ(しらかば町)を経営する本杉功さん(75)は「宣言期間に入ってからお客さんが来ない日もある」と肩を落とす。現在は営業時間を午前11時~午後4時に短縮。小まめに店内を消毒し、歌う場所にはビニールシートを設置し、飛沫(ひまつ)の拡散を抑えているが道が28日、苫小牧市を含む「措置区域」の飲食店にもカラオケ設備を提供しないよう要請したため、6月1日以降は休業入りする。本杉さんは「21日には営業を再開させたい」と話した。
苫小牧観光協会の藤岡照宏専務理事は、夏の観光シーズン本格化を前にした宣言期間延長に「飲食、宿泊業界への影響はかなり大きい」と指摘。医療態勢も厳しく、経済との両立が難しい現状に「今は耐える時期」と我慢の姿勢を見せた。
庭園施設のイコロの森(植苗)では現在、チューリップやクロッカスが見頃だが、来園者数は例年の半数近くまでに落ち込んでいる。7月以降は本州からの来園者も増える時期だけに「それまでには感染拡大が落ち着いてほしい」と願った。