政府が新型コロナウイルスの感染急拡大を受けた北海道への緊急事態宣言発令(16~31日)を決めた14日、苫小牧市内からは「遅い」「仕方ない」などとさまざまな声が上がった。飲食店、観光施設の関係者は集客への影響を懸念しつつ、「今はできることをやるしかない」と口をそろえた。
「これまでも外出自粛を心掛けてきたが、人との接点をさらに少なくする」と語ったのは泉町の榎戸克美さん(74)。「感染拡大防止に向けた政府や道からのメッセージに乏しさを感じる」とし「情報が少ないと不安感や信ぴょう性の低いうわさが生まれる。われわれにどう行動してもらいたいか、何をすべきかといった指標を積極的に示してほしい」と注文を付けた。
大町の会社員倉下雅貴さん(23)は「道内での感染者急増は目に見えていた。緊急事態宣言は、ゴールデンウイーク前に出すべきだった」と一連の対応に疑問を呈し、「これまで通り買い物以外では外を出歩かないようにしたい」と述べた。
澄川町の主婦後藤千晶さん(36)は「感染者数がどんどん増えていくのが怖かったので、宣言は仕方がない」としながら「ようやく日常が戻りつつあった時期だけにショックもある」と本音を吐露した。3児の母で、最も気掛かりなのは小学校に入学したばかりの長男の学校生活への影響。「6月には初めての運動会を控え予定通りできるか不安だし、楽しい活動が制限されている子どもたちのストレスも心配。宣言により、良い方向に物事が進むことを心から願っている」と力を込めた。
双葉町の高校教諭佐藤千尋さん(31)も「(感染の危機が)身近に迫っているのを感じる。教育現場で働いている以上、生徒たちに感染対策をしっかり指導していきたい」と気を引き締めた。
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大町の「STYLISH BAR mou」のオーナー瀬野理沙さん(34)は「一時期よりもお客さんが戻ってきていたのでなんとも言えない気持ち。しっかりとした補償があるのか心配。休業については他店の様子もうかがいながら考えたい」と話した。
錦町の「大衆酒場 吉米」の店主吉田雅詞さん(42)は「どこの地域も飲食店は厳しい。これだけ感染者が増えると道内全域の緊急事態宣言も仕方なく、当店は16日から休業する。補償を望む気持ちもあるが、まずは再開まで頑張るしかない」と語った。
港町の海の駅ぷらっとみなと市場事務局の青谷尚人さんも「感染が拡大しており、やむを得ない措置」と冷静。1年以上続くコロナ禍で、市場内にはインターネット販売や宅配を検討している店舗もあるといい、「今はできることをやっていくしかない」と述べた。
美沢のノーザンホースパークは感染拡大防止や来園者とスタッフの安全確保へ16日から当面の間、臨時休園することを決めた。担当者は「休園中は公式オンラインショップやSNS(インターネット交流サイト)を通じて楽しんでもらいたい」と呼び掛ける。
表町のホテルウィングインターナショナル苫小牧の菅野健太支配人(36)は「覚悟はしていたが昨年の緊急事態宣言時と同様、非常に厳しい状況になるのでは」と懸念。昨年4~5月の宣言時、ホテルの稼働率は日によって2割から3割に落ち込んだ。今年に入って徐々に客足が戻り、GW期間中はレジャー目的とみられる宿泊も目立ったが全国でまん延防止等重点措置の対象地域が拡大し、今月末は空室が増加。6月にはスポーツ大会や東京五輪の聖火リレー関係者らの予約が入っているものの「17日以降、キャンセルの連絡があるかもしれない」と動向を注視する。