アイスホッケーアジアリーグのジャパンカップは20、21両日、ダイドードリンコアイスアリーナ=東京都西東京市=で2試合が行われた。王子は栃木日光との5回戦を延長戦で物にしてタイトル獲得を決め、翌21日の6回戦も6―0で快勝。18勝4敗で勝率を8割1分8厘に伸ばした。栃木日光は11勝9敗とし、2試合を残して2位が確定した。(北畠授)
横浜市で開催予定だった横浜―ひがし北海道は、新型コロナウイルスの影響でひがし北海道が試合を辞退していたため、2試合とも横浜の不戦勝になった。
21日
▽6回戦
王子イーグルス6―0栃木日光アイスバックス
▽得点者【王】中屋敷(高橋、橋本)大澤(中屋敷、高橋)大澤(中屋敷、中島)久慈(大澤)大澤(小林、高木)高木(久慈、山田)▽GK【王】成澤【日】井上▽シュート数【王】31【日】29▽反則【王】14分【日】20分▽パワープレー得点【王】3【日】0▽キルプレー得点【王】0【日】0▽観客数770
王子が攻守に圧倒した。第1ピリオド4分すぎに1人多いパワープレーでFW中屋敷が先制点を挙げると、2ピリ以降はFW大澤が2度パワープレーで得点するなどこの試合ハットトリックの活躍。守ってはGK成澤が今季初完封と気を吐いた。栃木日光は反則からの失点がかさみ、リズムをつくれなかった。
横浜グリッツ(2勝14敗)=不戦勝=ひがし北海道クレインズ(11勝11敗)
20日
▽5回戦
王子イーグルス4―3栃木日光アイスバックス
▽得点者【王】大澤(レデンバック、橋本)レデンバック(高橋、山下)高橋(橋本、中屋敷)高橋(レデンバック、山下)【日】佐藤(古橋、牛来)古橋(佐藤、大椋)牛来(大椋、佐藤)▽GK【王】マッキンタイア、成澤【日】福藤▽シュート数【王】36【日】36▽反則【王】12分【日】22分▽パワープレー得点【王】2【日】1▽キルプレー得点【王】0【日】0▽観客数816
王子が競り勝ちジャパンカップ優勝を決めた。GKを除いた3人対3人の延長戦3分すぎに、左サイドを駆け上がったFW高橋がレデンバックのパスに合わせ決勝ゴール。栃木日光はGK福藤を中心に粘るも、あと一歩及ばなかった。
横浜グリッツ(1勝14敗)=不戦勝=ひがし北海道クレインズ(11勝10敗)
― FW高橋、頂点導く2ゴール
優勝を決めた20日の一戦で副主将のFW高橋が獅子奮迅の活躍を見せた。延長戦の決勝ゴールを含む2得点1アシスト。3度も同点に追い付かれる「タイトな試合だった」と振り返りながら、「1戦目で優勝を決めようと仲間たちと話していた。勝ち切ることができて良かった」と晴れやかな表情を浮かべた。
第2ピリオド6分すぎにFWレデンバックの得点をお膳立てすると、第3ピリオド9分すぎの1人多いパワープレーでは「優勝への気持ちが乗った、実力以上のシュートが打てた」と栃木日光布陣の間を抜く強烈なミドルシュートを決めた。
延長戦では、相手のパスミスを突いてパックを奪ったレデンバックとゴールを襲い、「オープンネットに打つだけだった」と絶妙なパスをたたいてゴールに押し込んだ。
苫小牧工業高から2011年入団で所属10年目の節目を迎えた今季は「得点にこだわりたい」としながらも、昨年末までの14試合で4得点(13アシスト)と伸び悩んでいた。今年2月にレデンバック、三田村とFWラインを組んで以降は5得点と絶好調。「うまくアジャストできている」と胸を張る。
王子で選手や監督を務めた父啓二さんの影響で「小さい頃から憧れてきた」伝統あるチーム名でプレーするのも残りわずか。「次はレッドイーグルスとして、子供たちに憧れられるチームにしていけたら」と語っていた。
―GK成澤、鉄壁のリリーフ
GK成澤の一瞬の好セーブが、ジャパンカップ制覇の布石になった。20日の5回戦。延長戦開始わずか数秒で守護神マッキンタイアがシュートブロック後に体勢を崩し左足を負傷。バックアップの成澤に急きょ出場機会が巡ってきた。
日本代表経験豊富な実力者も、延長戦からの途中出場は初めて。「正直、体はまったく動いてなかった」。滞氷後間もなく、相手エースFWの古橋がフリーでゴール前に切り込んできた。巧みなフェイントにいったん「かわされた」が、そこから右足を目いっぱい伸ばしてシュートを防いだ。
その約30秒後、FW高橋が決勝点を奪った。「優勝のことは考えず無の境地でプレーしようと思っていたけど、勝ちたい気持ちが反射的に右足を動かしてくれた」と笑顔を見せた。
成澤は21日の6回戦でも奮闘。「チームメートが体を張ってシュートブロックしてくれたおかげ」としながらも、18年11月15日のアジアリーグレギュラーリーグ対栃木日光以来となる完封試合を達成した。菅原監督は「安心して見ていられた」とたたえた。
27、28両日の横浜戦でも出場が予想される。「連勝して王子としての最後を飾りたい。もちろん0点で抑えることができれば一番いい」と力強く語った。
―21日、連勝で首都圏ゲーム締める CF大澤がハットトリック
勝ってかぶとの緒を締める―。優勝を達成しても、王子は決して手を緩めなかった。21日は「攻守の内容がすごく良かった」と菅原監督が目を細める盤石の試合運びで、今季最初で最後となった首都圏ゲームを連勝で飾った。
ひときわ存在感を見せたのはCFの大澤。「自分たちの試合を毎回楽しみにしてくださる人がいる。優勝したからといって手を抜くわけにはいかない」と3得点の大暴れ。20日にも先制点を挙げるなどFW高橋、GK成澤に負けず劣らずの見せ場をつくった。「連勝できてひと安心」と相好を崩した。
菅原監督は20日の試合後、「優勝の喜びを味わってほしい」とあえて翌日の試合に向けた話は控えたという。モチベーションの維持が難しいことは承知していたが、「気持ちを切り替えて戦ってくれた」と選手の集中力に感服した様子だ。
27、28両日には本拠地苫小牧でジャパンカップ最終戦がある。王子の名で挑む最後の試合機会だが、「4月のクラブ化に向け選手、スタッフは全員前を向いている。これでチームが終わるわけではない。いつも通りの準備をしていきたい」と話す。
大澤は「地元のファンや新型コロナウイルスで苦しんでいる人のためにも、一生懸命頑張る姿を見せて勇気づけたい」と意気込んでいた。