胆振管内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから1年。感染はどのような要因で拡大し、どんな対策が必要なのか。苫小牧保健所の堀幹典所長に聞いた。
―胆振管内の感染状況は。
「道内でも比較的早い時期に感染が確認された。苫小牧は札幌の通勤圏で、人口が全道で4番目に多い。苫小牧を中心に大規模な工場や事業所があり、若い労働者も多い。行動範囲が広い若年層を中心に感染者が増えた。昨年12月以降は高齢者施設でクラスター(感染者集団)が発生し、高齢者の感染が拡大した」
「苫小牧市内の世代別感染状況を昨年11月と今年1月とで比べるといずれも30代以下が過半数だが、1月は10歳未満や60、70代にも広がった。クリスマスや正月に親戚で集まるなどし、若年層から高齢者や子どもに広がった印象」
―感染拡大が続いた。
「人数の多い事業所や福祉施設、学校などでクラスターが断続的に発生したことが要因。年末年始は帰省などで、普段は生活を共にしていない多くの人との会食に加え、マスクを着けない3密(密閉、密集、密接)状態などから、感染者が相次いだと考えられる」
―予防策は。
「新北海道スタイルの実践。マスク着用、手洗いなどを徹底してほしい。そして、感染リスクが高まる(1)飲食を伴う懇親会(2)大人数、長時間に及ぶ飲食(3)マスクなしの会話(4)狭い空間での共同生活(5)更衣室や喫煙所など居場所の切り替わり―といった五つの場面を極力避けること。厚労省の接触確認アプリ、北海道コロナ通知システムも積極的に活用してほしい」
―五つの場面についてより詳しく説明すると。
「(1)は体調不良を感じるときは参加を控えてほしい。(2)はマスクが外れがちになる。人数を減らすか時間短縮を。(3)はマスクをして距離を保つよう心掛けること。感染しても症状はすぐに出ないし、無症状の場合もある。『感染もあり得る』という前提で過ごしてほしい。(4)は食事の際に人数や時間を分けたり、会話を控えたりしてリスク軽減に努めること。(5)は喫煙時、マスクを着用できないため要注意。換気と密集の回避を心掛けてもらいたい」
―感染者の受け入れ体制は。
「管内の感染症指定医療機関(苫小牧市立病院など)のほか民間医療機関、他圏域の医療機関にも入院してもらっている。感染症病床はベッドを増やすと、医療人材も多く確保する必要があり、(管内での増床は)困難。市立病院でもコロナ治療が長期化しているが、同病院で本来担う高度専門医療の対応が、十分にできなくなることを危惧している。現在12床を確保するため、病棟一つを閉鎖している現実もある」
―最近は管内の新規感染者数が落ち着いているようだ。どのように過ごせばよいか。
「住民の予防意識が高まり、一人一人の頑張りが感染を抑える結果につながっている。ただ、近郊管区では依然としてクラスターが発生している。進学、転勤などのシーズンを迎えるが飲食を伴う懇親会などは極力避けてほしい。限りある医療資源で1人でも多くの命を救うことが重要。一人一人が『感染しない、させない』という強い気持ちで、気を緩めず対策を心掛けてほしい」