決して牛に引かれたわけではないが、長野市内の宿泊先ホテルから程近い信州善光寺さんにあいさつなしでは帰れない。東胆振の選手たちの必勝祈願はもちろん、取材の成功も願うべく足を運んだ。
従来の高校総体であれば、出場選手の保護者たちが開催地の寺社を参拝する姿によく遭遇する。ただ今年は新型コロナウイルスの影響で無観客開催。加えて早朝に出向いたこともあり、居た人はまばらだった。
〈感染症予防のため、お数珠頂戴を当面の間、見合わせます〉―。山門の柱に看板が立てられていた。法要時に住職らが本堂へ向かう際、参道で待つ参拝者の頭に数珠を触れさせ功徳を分ける習慣だそう。一日も早く平穏な信仰の機会が戻ってほしい。
参拝のかいあってか、22日のスピードスケート競技で表彰台に立つ東胆振勢を取材することができた。しかし、いいことばかりでもない。形状が似ていた車の鍵とホテル客室の鍵を間違え、部屋から出るとドアが自動施錠して閉め出された。冬装備のレンタカーを借りたもののスノーブラシがなく、車の窓ガラスに張った氷を財布内にあった頑丈で低優先順位のポイントカードで取り除いた。
アイスホッケー競技取材のため、その夜に軽井沢町の宿に移った。「ここもオートロックか」。妙な緊張感に包まれた。
(北畠授)