道と札幌市は16日、新型コロナウイルスの感染者急増を受け、道民に同市と他地域との往来自粛などを要請する方針を固めた。17日にも正式決定する。札幌に近い苫小牧からは週末を中心に行き来する人が多く、自粛による交通機関などへの影響が懸念されるが、バス事業者や宿泊、観光関連事業者らは「現時点で影響は見通せない」として当面は動向を注視する構え。一方、市民などからは札幌間の往来を自粛する声が出ており、地域経済に影響が出そうだ。
道と札幌市が要請しているのは、「感染リスクを避ける対策が取れない」ことを条件とした▽札幌市と道内他地域との往来自粛▽札幌市内での不要不急の外出自粛―の2点。
苫小牧―札幌間で都市間バスを運行する道南バス(本社室蘭市)と北海道中央バス(同小樽市)の2事業者は「最近は乗車率が回復基調にあったが、今回の要請でまた影響は出る。今後の動きを見ながら対応策を検討したい」(各担当者)と話す。
都市間バスで札幌に行く用事があるという市内在住の50代女性は、16日の知事と札幌市長の会談で固まった要請内容に驚いた様子で「しっかり感染対策をしてバスを利用したい」と語った。また、苫小牧に数日滞在していたという札幌在住の50代女性は「今後はよほどのことがない限り外出を控えたい」とし、JR苫小牧駅前発の都市間バスへ足早に乗り込んだ。
すでに打撃を受けているタクシー業界もさらなる落ち込みを心配している。60代後半の個人タクシー運転手は「コロナ前と比べると収入は3、4割減。最近になってようやく戻り始めていたのに」とし、減収分を補うため「朝は早めに出勤し、夜は勤務時間を延ばして売り上げを確保したい」と語った。
別の70代の男性ドライバーは「自分ではどうにもならない」とやや諦め顔。車内換気と小まめな消毒を徹底し「自分も感染しないようにしっかり対策しながら仕事を続けたい」と話す。
道ホテル旅館生活衛生同業組合苫小牧支部の佐藤聰支部長(ホテル杉田社長)は、市内では来月に複数のスポーツ大会が予定されているとし「主催者が往来自粛をどう受け止めて判断するかが気になる」と語る。
観光業も懸念を示すが、札幌圏の観光客が多い市内美沢のノーザンホースパークは「引き続きお客さまに楽しんでもらえるよう、これまでの感染対策を継続していく」としている。