道内で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、苫小牧市の繁華街から再び客足が遠のきつつある。道が10月28日に「警戒ステージ」を2に、さらに今月7日には3に引き上げ、札幌市ススキノ地区の飲食店に営業時間短縮を要請するなど、自粛ムードが強まっているためだ。ただ、苫小牧市内の飲食店はコロナ対策を徹底し、苦境を乗り切ろうと前を向く。警戒感がさらに強まった週末、錦町、大町の「夜の街」を歩いた。
午後9時ごろの市道二条通り。歩くと通り過ぎる人の姿はまばらだった。大町の日本料理店「四季の味てらさわ」ののれんをくぐると、カウンターから視界に入る範囲で2~4人のグループ3団体が小上がりで食事や歓談を楽しむ程度。マスク姿の男性店主(72)が調理に、女性の店員が配膳に集中していた。
同店は国の緊急事態宣言による外出自粛で打撃を受けたが、昼間に弁当を売るなどの経営努力で、9月は客足が前年の60%程度まで回復していたという。だが、同月の4連休(19~22日)以降、胆振管内でも感染者が急増し、10月は前年の半分ほどに落ち込んだ。例年であれば忘年会の予約も入るこの時期、空きが埋まる気配は一向にない。
午後10時すぎに市道一条通りも歩いた。タクシーや乗用車が走行し、スーツ姿の会社員や若者が闊歩(かっぽ)する姿はあるが、心なしか人通りは少なく感じる。再び二条通りに戻って錦町の飲食店ココカフェの扉を開けると、常連客2人の姿しかなかった。
村上智恵店長(37)は「コロナで大打撃を受けている。このままだと店が維持できない」と危機感を募らせる。同店も11月に入って予約の電話が途絶えたという。例年は忘年会も数十件行われるが、今年は仮予約で1件のみ。店内の消毒などコロナ対策を徹底するが、店を心配して訪れる常連客に支えられているのが現状だ。
市内で飲食店やカラオケ店など8店を経営するTLCフードサービス(大成町)の谷口亮代表(42)も「飲食店はみんな厳しい状況」と訴えつつ「感染防止対策を徹底しながら営業していることを発信することが大事」と強調。店頭で3密(密閉、密集、密接)回避などをうたう「新北海道スタイル」の順守を周知し、料理を運んで忘年会を事業所で行えるサービスも検討している。
あの手この手で苦境からの脱却を目指すが、年末に向けて忙しくなるはずの忘年会シーズンはコロナ禍で一変。その影響は深刻だ。北海道料理飲食業生活衛生同業組合苫小牧中央支部の斉藤芳夫支部長(70)は「加盟店で客足の減少や予約のキャンセルも発生している。再び休業要請が出るときつい」と述べ、いち早い終息を心から願った。
(室谷実)