横浜グリッツ 氷都、苫小牧で発進―ゆかりの臼井代表、FW濱島 熱い思い抱き奮闘

  • アイスホッケー, スポーツ
  • 2020年10月17日
王子FW高橋とパックを奪い合う横浜グリッツの濱島(左)=白鳥王子アイスアリーナ
王子FW高橋とパックを奪い合う横浜グリッツの濱島(左)=白鳥王子アイスアリーナ
サーモグラフィーを使って行われた入場時の検温=白鳥王子アイスアリーナ
サーモグラフィーを使って行われた入場時の検温=白鳥王子アイスアリーナ

 アイスホッケーのアジアリーグ・ジャパンカップに新規参入した横浜グリッツが10日、苫小牧の白鳥王子アイスアリーナでデビュー戦に臨んだ。企業人とプロ選手両立の二刀流プレーヤー育成を目指す異色チームが王子イーグルスと11日まで対戦し、延べ約2000人の観客に見詰められつつ奮闘した。ゆかりの選手、スタッフが氷都で新たな一歩を踏みだした。

 王子はフルセット編成で試合登録者数22人に対してメンバーわずか16人で挑んだ。補強外国人選手も合流前。結果は1回戦1―8、2回戦0―12の完敗。横浜は、打たれても打たれてもファイティングポーズをとり続けるボクサーのように最後まで戦った。

 日本人FWでは初のNHL選手を目指している苫小牧育ちの平野裕志朗(25)が渡米前の12月まで期限付きの在籍。初戦では王子に一矢報いるゴールを決めた。

 だが次々と横浜ゴールに押し寄せたのは王子。これを丹念に迎撃したのは濱島尚人(35)。本来はFWだが、平野らと息を合わせて自陣防衛に献身。連戦を終えた11日、防具を外した直後に汗まみれ、はだしのままリンクサイドでインタビューに応じ、「(王子との戦いは)簡単ではなかった。でもシーズンこの先、ゴールまでやり遂げるまでです」と語った。

 濱島は各人さまざまな勤め先で仕事をしつつトップリーグプロ選手を兼ねるチーム方針を体現しようと懸命だ。北米で過ごした大学までの学業期とホッケー修行が重なるオールドルーキーは苫小牧で小学2年から6年まで家族と暮らし、勇払小に通っていた

 5年時シーズンは白鳥アリーナ完成の1996年度。当時の市内大会で2度の準優勝を収めた。6年生がいたときは9人、主将になった5年生以下の新人チームはたった6人で戦い”勇払旋風”を起こした。GKは後に女子のソチ五輪(2014年)代表となった中奥梓さん。「あの時は面白かった。今も自分は人数の少ないチームで戦ってますね」と破顔一笑。グリッツ選手中最年長で「これからもっとチームワークを高めることを心掛けて、戦える組織にしていきたい」と志を示した。

 チームの臼井亮人代表(40)は札幌出身。苫小牧東高で3年間学び、当時の今井拓美監督率いるアイスホッケー部のFW。特に初戦では王子の猛攻にあらがった上で、できるだけ早く得点する試合運びを思い描いたが「開幕前にけが人が3人いて、いい準備ができなかった。点差が広がった」と率直に明かした。

 白鳥王子アイスアリーナを訪れたのは久々という。今年はリンクに映像放映可能な得点表示板が設置され、照明も発光ダイオード(LED)化。「素晴らしい施設になった。ここは思い出のリンク。本当に特別な思いがします」と頬が緩んだ。

 同アリーナ完成の96年時は同校生徒として荷物搬入の手伝いをしたほか、落成記念の国際試合も観戦した。卒業後進学した慶応大でもアイスホッケー部で活躍し、商社勤務や会社経営を経ながら築いた人脈と周到に準備。人口372万人の大都市・横浜をホームとする新チーム結成に至った。

 平野はもちろん、濱島ら海外で武者修行を積むなどした隠れた才能を結集した独自色の強いチームをつくってアジアリーグの大海原に船出。「やるしかないと思ってきました。他チームと一緒にホッケー界を盛り上げて変えたい。まずはチームでそのための仕組みをつくっていきます」。事業家としての挑戦心をにじませた。

 ― 会場はコロナ対策を徹底、今後も継続

 苫小牧の白鳥王子アイスアリーナで10、11の両日に行われた王子イーグルスの今季ジャパンカップ初戦、横浜グリッツ戦では新型コロナウイルスの感染対策が徹底されるかつてない光景が広がった。

 アリーナ入り口で対応するスタッフはマスクとフェースガードを装着。マスクを着けて来た入場者は手指をアルコール消毒した後、体温を測定する機器「サーモグラフィー」による検温を受けてから館内に進んだ。

 例年はスタッフが行う観戦チケットのもぎりも、今年は人同士の接触回避のため、客自らが半券をちぎって箱に投入してもらう様式とした。座席も1席の空席を設けて人と人との間隔を確保した。

 シーズン開幕戦を見に来た江井祥さん(45)=桜坂町在住、会社員=は「普段と雰囲気が違うけれど、試合が見られるだけでもうれしいです」と笑顔で語った。

 王子イーグルスの高田航太マネジャーは「今後も対策を続けて、試合を楽しみにしているファンの期待に応えていきたい」と話していた。

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