田中渓也さんIH部監督の教員 親子3代母校で指導-苫東高

  • アイスホッケー, スポーツ
  • 2020年9月30日
田中監督(右)と前監督の父正靖さん
田中監督(右)と前監督の父正靖さん
就任後初の公式戦となったNHK杯準決勝で得点した選手たちを拍手で迎える田中監督=25日、白鳥王子アイスアリーナ
就任後初の公式戦となったNHK杯準決勝で得点した選手たちを拍手で迎える田中監督=25日、白鳥王子アイスアリーナ

 苫小牧東高校アイスホッケー部を今年度から率いている監督は同部OBで保健体育科教員の田中渓也(32)さん。今年の3月末で勇退した前監督で元教員の父、正靖さん(63)からバトンを受け継いだ。昭和期に同校チームを35年率いて10度の全国制覇に導き、2014年に物故した祖父の正さん(享年89)からの親子3代が生徒として学んだ旧制中―高校の教壇に戻り、競技指導を担う全国的にもまれなケースとなった。田中監督は「高校生のときから教員になって東高に戻ってきたいと思っていた。努力と工夫を重ねて、全国優勝を生徒と一緒にかなえたい」と抱負を語る。

 田中監督は苫東高から日本大に進学し、DFとして活躍。2013年に道立高教員となって羅臼、伊達緑丘を経て今年4月に母校へ赴任した。

 公式戦の初陣は25日に苫小牧市内で行われたNHK杯準決勝。選手14人と少数精鋭の苫東は、倍の部員を数える北海道栄に中盤まで優位に試合を進めた。第3ピリオド後半に失点が相次いで3―5で敗れはしたが、田中監督は「チームの決まり事は徹底できていたし、悪くない試合だった」と選手の頑張りをたたえる。

 生徒指導のベースは自身が高校時代に味わった成功体験にある。当時教員の今井拓美監督率いるチームで2年生だった05年12月の道大会(帯広市)は初戦敗退。翌年1月に地元苫小牧開催された高校総体には開催地枠で何とか挑戦権を得ると、19人と潤沢な部員数ではない中、埼玉栄、八戸工大一など強豪私立を次々と下した。

 20年ぶりの苫小牧勢同士の対決になった決勝こそ駒大苫小牧に及ばず準優勝となったが、「努力から生まれる可能性を実感した出来事だった」。だからこそ「人数が少ないことを言い訳にして、チャレンジすることをやめてほしくない。自分たちでもやれるんだという強い気持ちを育てたい」との一心で生徒たちと向き合う。

 ビジョンは他にもある。競技人口が減り続けるアイスホッケー界を支える教員や指導者の人材育成だ。今年、仕事とプロ選手を両立する選手の在り方「デュアルキャリア」を掲げてアジアリーグに新規加盟した横浜グリッツの臼井亮人代表は苫東高出身で部のOBの先輩。東高生徒に思いを託しつつ、大学の選手から指導者となった自分の姿を見せることで社会に出ても競技に携われる可能性を示す考え。若い世代に「後進を指導してみたいと思ってもらうきっかけができれば」と話す。

 10月1日には、来年1月の高校総体につながる南北海道大会が始まる。同日の開幕戦で早くも道栄との再戦が控える。今年3月まで父正靖さんの指導を受けていたFW仲見颯太主将(3年)は、「雰囲気は似ているところがある。田中先生は自分たちの弱点を的確に教えてくれる」と言い、「高校総体制覇に向けて初戦から気持ちを入れて頑張りたい」と意気込む。

 長男の監督就任に正靖さんは「一年一年が勝負。自分が思った通りに、伸び伸びやっていってほしい」と背中を押した。

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