日本アイスホッケー連盟は新型コロナウイルスの影響で日本代表合宿など強化事業を現在は中断している。各国の強豪と渡り合うため男女トップの競技者が心技体を育む機会が世界的な感染症の猛威によって奪われるかつてない事態だ。日本代表主将経験を持ち、男女のナショナルチームで活躍している苫小牧出身のFW大澤ちほ(28)=スウェーデン・ルレオ=、DF山田虎太朗(28)=王子イーグルス=に近況を尋ねた。
― アイスホッケー 女子 スウェーデン・ルレオ・FW 大澤 ちほ
女子代表「スマイルジャパン」で2014年のソチと18年平昌の五輪2大会で主将を務めた大澤ちほ。出身地の苫小牧市内で自主トレーニングに励んできた。コロナ禍で2月以降、代表が集合した活動は停止に見舞われたが、「個人のフィジカル面を鍛える期間となった」と前向きに話した。
大澤は18~19シーズンからスウェーデン女子アイスホッケーリーグ加盟のルレオに所属中。前のレギュラーシーズンを2位で終えたルレオは、プレーオフファイナルまで進んでいたものの、同国内でのウイルス流行期と重なった優勝決定の戦いは中断していた。
大澤は3月中旬に帰国している。1月に苫小牧で行った選考合宿以来、代表活動は休止。そうした中、4月24日、直近6位となる日本のランキングが国際連盟に認定され、22年にある北京五輪出場が予選を経ずに決定する吉報も舞い込んだ。
本来、7、8月は合宿や海外遠征を軸にした代表活動が盛んに組まれ、強豪を選んだ対外試合を重ねる中でチームの課題を洗い出す重要期間。この時期の集合機会を失い、「試合感覚の維持や選手間のコミュニケーションも取れないので、チームの連係に支障が出ないかは不安」と率直に語った。
自身のフィジカル面の調整は順調に進んでいるという。帰国後は自宅で可能な筋力トレーニングを進め、6月上旬からは母校の苫小牧東高校アイスホッケー部の氷上練習にも参加。男子生徒の中での鍛錬を振り返り、「スピードやパワーがある選手相手の練習と踏まえて、いい刺激になった」と振り返った。
近くスウェーデンに戻る予定でFWのプレーヤーとして「スピードを生かした攻撃力が自分の武器。チームの勝利に貢献したい」。2年後の北京五輪時に就任すれば主将は3大会連続となる代表のリーダー格。「もし任されることがあれば務めを全うしたい」と意気込みを口にした。
― アイスホッケー男子 王子イーグルス・DF山田 虎太朗
早稲田大在学時から男子フル代表に名を連ね、身長184センチの恵まれた体格を生かして日本の守備を支えてきた山田虎太朗。他チームのアジアリーガー、海外挑戦者が集う代表活動は「自分のプレー幅を広げてくれる」貴重な場所だった。「試合や練習がしたくてもできないスポーツ選手は世界中にいる。東京五輪も延期になった。現実を受け入れるしかない」と懸命に前を向く。
7月から始まった所属先の王子イーグルスの氷上練習時には、「常に外国勢に対抗してプレーする意識を持ってメニューをこなしている」と言う。22年北京冬季五輪出場を懸け、代表主将としてチャレンジした今年2月の3次予選でランキング上位の開催国スロベニア代表に2―6で敗れて夢がかなわず、「個の能力差を実感させられた」。痛恨の一戦となった。
だが、こうした大舞台で大役を任されたことについては「『チーム』というものをより考えるきっかけになった」と振り返る。
自己研さんはもちろんのこと、所属先や年齢の垣根を越えた強固な組織づくりの方法も追い求めていく動機となった。「スポーツには人を明るくする力があると思う。代表活動が再開したら、いち早くうれしいニュースを届けられるようにしたい」と意気込んでいる。