企業トップに聞く 10 ホテルニュー王子 小林 健司(こばやし・けんじ)社長 高品質化で収益高める ビジネス需要が増加

  • 主要, 特集, 苫1面
  • 2025年2月6日

―2024年を振り返って。

「23年の脱コロナから、より安心安全なサービスの提供を推進した年になった。当社のホテル、機内食サービス事業の二つの大きな柱は、コロナ前の状況に『もうちょっと』というところ。コロナ禍で一時は売り上げが20%まで落ちたが、今は80%ぐらいまで戻った。特に23年度との比較では、ホテルの宿泊が110%、機内食事業も140%で、大きく回復した。コロナ前の18年、19年と比べても、ホテルの宿泊は上回り、機内食も80%」

「苫小牧地区のビジネス需要が増えた。さらに各種団体、特にスポーツの大会がコロナ前に戻り、多くのお客さまに利用していただいた。ただ、ホテルの中でも宴会やレストランは、まだ元に戻ってはいない。原価の高騰や最低賃金の上昇など事業を取り巻く環境はますます厳しくなってきた。その中でも収益基盤を改善しつつ、お客さま満足度の高いサービスの提供を進めた。リピート率が上向いていることが何よりも心強いと感じている」

―ホテル直営店やレストランメニューのリニューアル、「うまいもの市」など新規事業やイベントも積極的に取り組んだ。

「昨年はグランビューのランチバイキング撤退に伴い、和食こぶしで和フレンチ膳をランチとディナーで新たに販売した。和と洋が一緒に食べられると非常に好評で、一番のヒット商品になった。こぶしや中華桃園では定期的にバイキングフェアを開き、大変好評。レストランはウェブ予約も始め、現在予約の4割がウェブに移行。新規の利用者も増加傾向にある」

「夏はハルニレガーデンでジンギスカンビアガーデンを開き、7~8月に1100人以上の利用があった。宴会場では厳選したワインと日本酒を用意した銘酒会を定期的に開き、昨年11月には25回目、ホテル開業25周年の記念が重なり、多くの来場があった。うまいもの市も、北海道九州フェアとして3回実施し、1回につき1000人、計約3000人ものご利用があって驚いた。来期(25年度)以降も続けたい」

―課題やその対策は。

「宿泊業全体の課題として、フロントや客室清掃などあらゆる部門で、スタッフの確保が難しくなっている。条件を上げても充足しない状況が続き、自助・自社努力では限界との声も聞かれる。外国人スタッフの雇用や技能実習生の拡大、協業会社とのさらなる連携で対応したい」

「システムやマシンの導入で省力化を進めることも緊急の課題。ロボットがシティホテルにふさわしいかどうかも検討していかなければ。宿泊単価は上昇し、稼働率も回復してきたが、人件費、エネルギー、光熱費、材料費の高騰が収益を圧迫している。高品質とより良いサービスでシェアの確保を目指したい」

「昨年11月に13~15階の客室をリニューアル。エアウィーヴなどの最新ベッド、リファのシャワーヘッドに入れ替え、より上質なホテルステイができると好評。26年まで順次進め、最終的には全室リニューアルする。快適な客室環境や朝食の見直しなども進め、単価上昇と稼働率アップにつなげたい」

―25年の展望は。

「苫小牧市周辺を取り巻く環境は、データセンターや脱炭素など、ビッグプロジェクトが目白押し。この流れに遅れることなく、引き続きホテルをはじめ事業施設の高品質化を進め、より高収益の体質を構築したい」

「機内食事業は、国際線のさらなる増加に対応すべく、安心安全な生産、供給体制を強化する。外国人の技能実習生を採用し、チルドミール(冷凍食品)などの導入も検討する。ホテルと機内食の調理体制の連携や集約も検討し、持続可能な事業運営を進めていく」

「構想段階だが、王子グループが国内で20ヘクタール弱保有する『王子の森』を活用した事業を進める中、苫小牧周辺の森林でもホテルを起点としたネイチャー体験などのツアー開催を考えていきたい」

メモ 1963年にホテルトマコマイを開業し、73年にトマコマイホテルニュー王子に移転(2011年に閉館)。1999年にグランドホテルニュー王子をオープンした。

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