トヨタ計画概要発表の席で握手をするトヨタ自動車の磯村巌常務=中央=、鳥越忠行苫小牧市長=右=、北海道企業立地推進室・橋田健一郎室長=左= 平成2年2月、トヨタ自動車が苫小牧への進出計画を公表した。苫小牧港・西港臨海部に用地を取得するという。7月には、取得予定の98ヘクタールに展開する北海道工場(仮称)の建設計画を発表した。
■進出と操業開始
トヨタの進出表明に鳥越忠行市長は「今後のまちづくりの大きな弾みとなる」と歓迎の意向を示した。
トヨタ自動車にとって愛知県外への国内工場建設は初めて。愛知では人手不足と賃金コストの上昇、工場用地の狭あい化が進んでいた。特に賃金コスト。本体はともかく末端中小企業が対応できるかが、地方進出の最大の理由だった。
■地元企業の消極性
トヨタ進出に沸いた地元だったが、地元企業がその生産体系の一画を担えるのか。精密、緻密な自動車産業に対応できるのか。地元企業は関連事業参入になかなか手を挙げなかった。
手を差し伸べたのは、トヨタの側からだ。「トヨタさんの方から私どもに声を掛けてくれた。その装置を作るための部品のメーカーの紹介、図面まで頂いた。作り方も教えていただき、後は
自分たちで工夫してくださいということだった」(市内企業)
■企業と地域の課題
平成3年2月、トヨタ自動車北海道設立。同5年9月、竣工(しゅんこう)式。その後どのように進むのか。各年のトップの言に、企業と地域が負う課題が表れている。以下、苫民「苫小牧企業トップに聞く」より抜粋。
▽平成6年「地場企業とのつながりが広がるには時間がかかる」▽同8年「若い人が育っている。本社の工場と比べると足りないがチャンスは多い」▽同13年「北の拠点として常に利益を出せる体質づくりをする。1500人近い従業員を抱えている。期間従業員の働く場を確保したい」▽同15年「創業10周年の節目を迎え、(昨年の)絵画展などのイベントは市民にも喜んでもらえた」▽同16年「今までの役割は『工場』だったが『会社』としてのレベルアップが必要。地域から愛される会社を目指す」▽同19年「プロパーの管理職を育てていく。部品の地元調達率は6・5%で低い」▽同20年「従業員数は今夏3500人。減る可能性が高く1100~1200人の期間契約社員の雇用確保に努める」
(一耕社・新沼友啓)
《初期の関連企業進出》▽平成2年8月、加工機械メーカー「明和工業」▽同年11月、トヨタ系大手自動車部品メーカー「アイシン精機」▽平成3年1月、精密測定機設計製作メーカー「旭精密工業」▽同年3月、自動車用クラッチディスクなど製造の「ダイナックス」