苫小牧市は、最新の科学的知見に基づく国や道による各種災害想定を踏まえ市内での災害リスクを独自に検証し、公表した。2025年度までに全面的に見直す市地域防災計画の基礎資料の位置付け。最大のリスクは日本海溝・千島海溝を震源とする海溝型地震に伴う津波とし死傷者約2万8000人、避難者約9万人と推定する。新たに風水害や樽前山の噴火に対する被害想定も明示した。
7日、市役所で開かれた市防災会議で事務局の市危機管理室が明らかにした。
地震については、活断層型と海溝型の2パターンで検証した。
海溝型は道が22年に公表した津波に伴う死者最大約4万人などの想定をベースにしつつ、市内で津波避難ビル指定の動きが加速している点を考慮。さらに発災から10分以内の早期避難を促すことで約2万8000人の死傷者数を約6500人まで低減できるとの見通しを示す。避難者約9万人のうち、避難所利用者は約6万人と見込み、広域避難の仕組み構築を検討項目とした。災害対応に当たる市職員の15%が死亡または重傷を負うリスクも想定。災害廃棄物は約195万トンに上り、64ヘクタール分の仮置き場が必要とした。
活断層型は建物倒壊が最も深刻な被害で、死傷者約3600人と試算。ライフラインや交通機能への影響も精査している。
地震以外の最大の被害想定もしており、水害は約2万9000棟が床上浸水し避難者約1万6000人、土砂災害では約400棟が被害に遭い、避難者約1000人とした。
樽前山の大規模噴火では、火砕流で約1700棟、火山灰では約5万1000棟の全壊を見込んでいる。
同日の防災会議には29機関から計33人が出席。新たな市地域防災計画については同会議メンバーによる検討部会に加え、市職員による庁内プロジェクトチームを設置し、26年3月までに策定することを確認した。
市の防災対策の最上位計画で大規模災害に伴う法改正などで部分的な修正を重ねてきたが、全面改訂は1998年3月以来2回目。現行計画では震度6強の直下型地震による建物全壊144棟、死傷者25人、被災者9410人を最も深刻な被害とし、災害対策をまとめている。