キャッシュレスは使い過ぎに注意 「子どもがこっそりお金をためる貯金箱はなくなり、子どもの小遣いの使い道を知ろうと思えば、親は全部見られるのよ」―。こう教えてくれたのはオーストラリア人の母親。豪州は韓国、中国に次ぐキャッシュレス大国で、子どもの小遣いも口座管理が浸透している。日本でも、子どもに電子マネーを渡す親はいるが、キャッシュレス決済全体の比率はまだ4割強だ。
子どものお金の使途を親が把握できるのは安心な半面、子どもは親に内緒でお金をためたり、サプライズで親への贈り物を買ったりしにくくなる。子どもの成長段階に応じて、親子でどの程度まで利用履歴を共有するか設定できるようにするなどの工夫が金融機関や決済サービス事業者には求められる。
キャッシュレスが消費者に及ぼす影響としてよく挙げられるのが、現金に比べて幾ら支払ったか感覚を得にくい点。財布からお金を数えながら取り出す必要がなくなるためと考えられている。
自宅近くにあるスーパーなどの小売店は、子どもが初めてお金を使う経験の場であり続けている。しかし最近は人手不足などの影響で、客が購入する商品のバーコードを読み取り支払いを済ませるセルフレジの導入が進んでいる。子どもに対し、使い過ぎを予防する情報の提供、店員の声掛けが重要になるだろう。
今後加速するであろうデジタル化の社会で、企業も親も、子どもがお金をうまく使って成長できる環境をつくっていかなければならない。
(文・日本総合研究所チーフスペシャリスト村上芽、イラスト・冬川智子)