平成をたどる 苫小牧の30年◇38 第Ⅲ部「改革の行方」⑪ 平成18(2006)年 岩倉市政誕生 大差で勝利、新風求めた有権者 信頼回復強調も難問多く

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  • 2025年6月4日
初登庁した岩倉博文新市長

 桜井忠市長の突然の辞任によって市長選挙が行われ、岩倉博文新市長が誕生したのは、平成18年7月のことである。以降、病床に伏す5期目半ばまでの18年間、岩倉市政が続く。

 ■新しい風

 選挙戦は、鳥越忠行元市長との一騎打ちであった。行財政改革、産業振興と雇用対策など主立った公約にそう大きな違いはない。例えば行革では「新たな改革計画の策定」(岩倉)と「財政健全化プランの抜本的見直し」(鳥越)、「ごみ収集、学校給食センターの民間委託、市営バスの民間移譲」(岩倉)と「ごみ収集業務と市営バスの民間委託拡大」(鳥越)、「指定管理者制度の効率的運営」(岩倉)と「指定管理者制度の活用による施設管理の民間移行」(鳥越)など。結果は6000票の大差で、岩倉氏が勝利を得た。鳥越氏が「過去の実績」を強調したのに対して、岩倉市は多選批判の中で「新しい風」を強調し、それが有権者を捉えたというのが、一般の見方であった。

 ■「がむしゃらに」

 7月11日の初登庁。初めての記者会見で岩倉新市長は「4年間の任期を全力投球で市政刷新、活性化に努力したい」と決意を述べた。

 市政の混迷を受けての選挙だっただけに信頼回復を強調し、会見冒頭、「新しい息吹を発信することが信頼回復につながる」「リーダーとしてがむしゃらに仕事をする。質の問題ではない。2カ月で新しい息吹を伝える。見ていてほしい」と、意気込みを見せた。初登庁前日のインタビューで新市長は次のように語っていた。「周囲から市政運営の難しさについて進言を受けたが、生まれ故郷である苫小牧に尽くすための苦労ならいとわない。当選が決まってわくわくした気持ちだ」。その高揚感が、初の会見にもあふれていた。

 ■課題山積

 ただ、やはり課題は山積していた。目前には在日米軍戦闘機の千歳基地への訓練移転問題があった。市と市議会は移転反対の姿勢を明確にしていたが、日米両国政府は地元の意向を無視して最終合意をしてしまっていた。そして予算。年度予算はすでに前任市長のもとで決定済み。7月からほぼ丸1年、自分の政策に使える財布がない。そして、前市政混迷の一因となった労使の信頼関係の修復と構築。多くの難問を抱えながらの出船であった。

 (一耕社・新沼友啓)

 《2006年報道ドキュメント》

 〈1月28日〉氷都とまこまい国体開幕

 〈2月16日〉丸井今井旧苫小牧店ZEUSへ売却

 〈2月24日〉サンプラザ地下1階にラルズマート苫小牧駅前店がオープン

 〈3月17日〉サンプラザが「苫小牧駅前プラザegao(エガオ)」として新装オープン

 〈3月21日〉米軍嘉手納基地のF15戦闘機訓練移転。桜井忠市長反対表明。市議会反対決議

 〈3月27日〉鵡川町と穂別町の合併による「むかわ町」と、早来町と追分町の合併による「安平町」が誕生

 〈3月29日〉元町の海岸付近で、ベリーズ船籍の貨物船オーシャンゲム(1492トン)が座礁

 〈4月1日〉総合、日吉、川沿公園の各体育館など有料化、値上げ/中央図書館祝日開館

 〈5月18日〉桜井忠市長辞職願い提出

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