いろいろな物が簡単に手に入る現在、身の回りにはたくさんの物があふれています。そのような中、私たちは本当に必要な物が何なのか分からなくなっていないでしょうか。
茶道は引き算の美学だと言われています。あれもこれもと足していくのではなく、必要な物だけを選び取ることが大切とされているのです。
お茶室には余計な装飾がなく、最低限の道具だけが整えられています。質素で何もないからこそ、核となるものが際立ち、心のぜいたくを感じます。
断捨離という言葉は、「断・捨・離」という三つの漢字で成り立っています。物を断ち、捨てれば、執着も離れていくという意味だそうです。
この引き算の美学こそ、現代を生きる私たちに生き方のヒントを与えてくれるものではないでしょうか。
たくさんの物に囲まれていると、心まで物であふれ、雑然としてしまいます。
私たちの日常でも身の回りの物を見直してみませんか? 捨てる、手放すという判断をする際、今の自分にその物が本当に必要なのかを見極めることができます。
思い切って余計な物をそぎ落とし、手放してみる。そうすることで、身の回りがすっきりとするだけでなく、心の整理にもつながります。
(竹田理絵・裏千家茶道教授)余計な物をそぎ落とした茶室