夏本番を迎える前の梅雨の時期に起きる熱中症。正式な医学用語ではないものの、「梅雨型熱中症」としてメディアで取り上げられ、注意喚起されている。南町田病院(東京都町田市)救急科の西竜一担当部長に話を聞いた。
▽認識を改めて
熱中症の原因について、西担当部長は①環境②身体③行動の三つを挙げる。
①は気温、湿度、日差しや放射熱、風を指す。室内なら室温が28度以上、湿度が70%以上、日差しや物からの放射熱が強い、換気が行われていない無風状態―はリスクになる。②は、身体が暑さに慣れる「暑熱順化」ができていない状態や、子どもや高齢者、持病がある場合。③は、激しい運動や労働などによる著しい体温の上昇だ。
これらの原因がすべてそろわなくても、「5月の暑い日、梅雨時の晴れ間や梅雨明け直後などの急激な気温の上昇や多湿も、熱中症を起こす危険な状態です」と説明する。梅雨時は、多湿で汗が引かない、喉の渇きを感じづらいことも誘因となるという。
総務省消防庁によると、2024年5~9月の熱中症による救急搬送件数は、調査を開始した2008年以来、最多の9万7578人を記録した。5月(2799人)、6月(7275人)にも多くの人が救急搬送されている。年齢では高齢者が最も多く、発生場所は住居内が最も多かった。
「夏場の熱中症は多くの人が注意していると思いますが、実際には5、6月でも起こり得るという認識を持ち、原因についても知っておくことが大切です」
▽熱中症を疑う
予防や対策として、温度だけでなく湿度にも注意し、早めの暑熱順化の獲得を。「運動やストレッチ、入浴などで汗をかく訓練をしましょう。適度な水分と塩分を補給する習慣を身に付け、エアコンを活用するのも重要です」
代表的な症状については、立ちくらみや筋肉痛などの状態(軽症)であれば自力で水分・塩分補給ができるが、頭痛や吐き気・嘔吐(おうと)、倦怠(けんたい)感などが表れる状態(中等度)になると医療機関を受診するのがよい。呼び掛けに応じない意識障害や、けいれん・手足の運動障害などの状態(重症)なら、迷わず救急車を要請してほしいという。
「熱中症は国民病とも言われます。前述の症状に当てはまる人を見かけたら、5、6月でも熱中症を疑い、涼しく風通しの良い場所に移して水分と塩分を補給させてください。場合によっては、ためらわずに救急車を呼びましょう」と、西担当部長はアドバイスしている。
(メディカルトリビューン=時事)
◇ ◇
南町田病院の所在地は、郵便番号194―0004 東京都町田市鶴間4の4の1。電話042(799)6161。
5、6月にも起き得る