夫婦でバンライフ【⑨】 手仕事が旅の彩りに アイヌ文化からSDGs精神を知る

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  • 2025年6月5日

 車のDIYに注力する傍ら、2017年は全国縦断の8カ月旅を満喫。北から南まで20以上の市町村に滞在しました。

 石川県の能登半島で伝統の製塩法を学び、新潟県では福島との県境にある圧倒的スケールの奥只見ダムに息をのみました。千葉県では絶景が見られる鋸山へ。山頂にはスリル満点のスポット「地獄のぞき」が。突き出た岩の先端から眼下の景色を見渡し、ハラハラしたのを覚えています。

 千葉では発酵文化との出合いも。神崎町では無農薬栽培の米などを使ったこだわりの自然酒の蔵元を、香取市では柿を丁寧に発酵させて作る酢の醸造所を訪ねました。

 発酵に魅了された私は、バンの中でみその熟成やパン作りに挑戦。砂糖とフルーツを瓶詰めして発酵させるシロップは、毎日かき混ぜ1カ月以上寝かせる必要がありますが、自然な甘さが絶品です。手仕事の時間が旅の彩りとなりました。

 さらに各地の縄文遺跡巡りも。日本人の精神性やルーツに思いをはせつつ、北海道でアイヌ文化を掘り下げる旅へ。神に感謝をささげる儀式「カムイノミ」や、伝統的織物の「アットゥシ」、命は自然に返り巡るものとする死生観など、信仰や衣食住に触れました。

 今でも心に残るのは、あるアイヌの女性の言葉です。「人は自然の恩恵なくしては生きられない、だからそれを汚し壊してはならない。それを分かって、私たち一族の先祖は7代先のことまでを考えて暮らしていたの」

 今注目される持続可能な開発目標(SDGs)の精神は、遠い昔自然と共に暮らしてきた人々の中に既に根付いていたのだと感じます。

 (ライター・米田佐和子、写真・米田将史)

 各地の名産の桃や黒糖などを詰めて作る発酵シロップ(上)、簡単手作りパン

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