鉛中毒、バードストライク、疥癬(かいせん)、ロードキル―。「なんのことだろう?」と思う方もいるかもしれませんが、いずれも野生動物が人間社会と接することで直面している深刻な問題です。
例えば、鉛中毒。北海道ではすでに鉛弾の使用は禁止されていますが、なおも違法な使用によりオジロワシなど猛禽(もうきん)類が命を落とす事例が後を絶ちません。苫小牧でも、鉛中毒に陥った個体が猛禽類医学研究所(釧路市)に運ばれたことがあります。
さらに、ドライバーであれば誰もが当事者になり得るのがロードキル。道東で出合ったシマフクロウも、森の奥ではなく道路脇にたたずんでいました。飛べるはずの鳥が車との衝突で命を落とす。そんな現実があるのです。
疥癬もまた、人による餌付けなどが誘因となる皮膚病で、多くの野生動物に影響を及ぼします。加えて、人が捨てた食べ残しに誘引されたヒグマが、スイーツの包装ごと摂取していた場面に出くわしたこともあります。それはまさに、自然が壊れる瞬間でした。
こうした野生動物とのあつれき、そして自然との向き合い方を伝えるべく、新たな団体「ノノオト」を友人らとともに立ち上げました。ただ観察して満足するのではなく、「関わること」を大切にしたい。その思いが「ノノオト」という名に結実しました。
最初の活動は知床半島、世界自然遺産登録20周年事業で、6~8月にオホーツク管内斜里町の知床自然センターで企画写真展を開催します。これからは胆振、日高の地にも活動の輪を広げていきます。
(日本野鳥の会苫小牧支部副支部長・小林誠)