食べるために重要な舌の機能も、年齢とともに衰えてはいきますが、悲観的になる必要はありません。日々の運動習慣が健康な体をつくるように、口を鍛えれば、おいしく食事をし続けることが可能になるのです。
今回は日常生活で舌を鍛え、衰えを抑える方法を紹介します。
ガムをかむと、舌の機能やかむ能力が改善することが知られています。入れ歯にくっつくため、しばらくかんでいないという声も聞きますが、入れ歯に着きにくいタイプも市販されています。ぜひ試してみてください。
軟らかいものばかり食べる習慣は考えもの。口をあまり使わなくてよくなり、ますます衰えていきます。少しかみ応えのある肉や野菜などに挑戦するのもお勧めです。
硬いものを食べるには歯が丈夫でないといけないので、歯科医院通いを怠らないようにしましょう。かめる歯があるからこそ、いろんなものを食べてみようと意欲が湧くものです。口の力が衰えていて医師から食事の指導を受けている場合などは、無理して硬いものを食べてはいけません。
おしゃべりでも舌を鍛えられます。特に定年退職後の男性は、誰かと会って話す機会が激減する場合が多く要注意です。
積極的にカラオケに出掛けるのもよいでしょう。他人の前で声を張り上げ上手に歌おうとすると、舌や喉を駆使することになります。楽しみながら舌を鍛える理想的な方法です。
私は、食べるための口のリハビリを専門としており、さまざまな患者さんを診ています。診療を通じて感じるのは、「食いしん坊」と「おしゃべり」は口の機能が衰えない、脳卒中などの病気でいったん衰えたとしても回復が早い―ということ。一生、この気持ちを忘れないようにしましょう。
(菊谷武・日本歯科大口腔リハビリテーション多摩クリニック院長、イラストはカモシタハヤト)
楽しみながら舌を鍛える