中学校で「フィードフォワード」について講演する久野和禎さん 進学や新学期のクラス替えでなじめなかったり、交友関係や勉強に悩んでいたりする子もいるだろう。落ち込んだとき、気持ちを前向きにする方法の一つに「フィードフォワード」という考え方がある。
フィードフォワード協会(東京都港区)の久野和禎代表によると、過去を反省して次に生かすフィードバックと異なり、フィードフォワードは未来に軸足を置いて今後どうしたいかを考えるのが特長。知的な活動や情報処理を科学的に解明する認知科学に基づいた手法だが、日本ではあまり知られていないという。
「思い通りいかないと、人は過去の失敗にとらわれて落ち込みがちだが、気持ちを切り替えられるようにすることが大切。いつまでも引きずっていると、くよくよする癖がつき、性格も後ろ向きになってしまう」と久野さん。
フィードフォワードは例えば、就寝前に毎晩「あすは何をしたい?」という質問を親が子どもに投げ掛けたり、子どもが自問自答したりすることから始めると続けやすい。「親子の会話で『きょう、学校で何をしたの?』というのはよくあるが、それは過去を振り返っているだけ。大事なのは、子どもが未来の自分の姿をイメージするようにすること」と説く。
あす食べたい物、あすやりたいことを考えるだけでも十分。目標や夢を持ち、それが実現したときの自分の姿を想像するのもよい。幼少の頃から、「自分は今後どうしたいか」ということを考える習慣をつけておくと、成長したときに気持ちの切り替えができるようになるという。
「未来のことをたくさん考えて、そのことを口にしていると、過去にあったつらいことや悲しいことの記憶が薄れることが科学的に分かっている。過去から学ぶことはあるが、それは終わってしまったこと。自分の意志で変えられる未来について考える時間を増やすと、徐々に前向きになれますよ」と話す。