隣り合わせの危機ー住宅街にヒグマ(中) 市 初の特別警戒態勢 マニュアル超え巡回強化

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  • 2025年6月11日
保護者と一緒に下校する拓勇小児童=3日、苫小牧市拓勇東町

 3日未明から苫小牧市拓勇地区でヒグマの出没が相次いだことを受け、市は初の「特別警戒態勢」を敷いた。小中学校周辺のパトロールやヒグマの捜索、痕跡調査はそれぞれ6日まで続けられた。

 捜索、痕跡調査は基本、市職員やヒグマ防除隊員による目視で行われたが翌4日、新たな目撃情報があった明野川沿いは草木が生い茂っていたため、赤外線機能付きカメラも投入して進められた。

 最初に目撃された沼ノ端北7号公園(拓勇東町)周辺では、家庭菜園やごみステーションに荒らされた形跡はなかったが、夜のうちに生ごみを含むとみられるごみ袋を出し、ヒグマを誘引しかねないケースがあった。また、ヒグマの絵に「危険」と大書きした看板設置にもかかわらず興味本位で公園に近づきカメラを向ける人や、現場近くで犬を散歩させる人の姿も見られたという。

 市環境衛生部は広報車や防災行政無線で注意喚起を重ねたが、武田涼一次長(51)は「ヒグマへの危機感を十分に浸透させられなかった」と残念がる。

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 2022年に策定した「ヒグマに関する危機管理マニュアル」に沿えば、今回のケースはヒグマが市街地を徘徊(はいかい)した際の有害性の判断基準の中で最も低い、「人を恐れて避ける」の「0」に該当。「0」では市職員や市ヒグマ防除隊による▽痕跡調査▽注意看板設置▽ホームページでの周知▽連絡通報―を基本行動とし、学校周辺のパトロールなどは盛り込んでいない。

 ただ、▽目撃場所に戸建てや共同住宅が建ち並ぶ▽小中学校も近い▽クマの行方が分からない―などの理由から急きょ、特別警戒態勢を実践。近年、植苗や桜坂町の住宅地でヒグマが出没した際の対応で培った知見を生かし、マニュアルを見直そうとした矢先の出来事だったという。武田次長は「川沿いを歩いて移動していたヒグマが誤って住宅地に迷い込んだとしたら、他の市街地でも起こり得る」と警戒を強める。

 市はマニュアルの見直しと並行し、ヒグマの「ゾーニング管理」に着手する方針。道が3月にまとめたガイドラインを基に「人の生活圏」「ヒグマの生息地」といった視点でゾーンを設定し人とヒグマの空間的なすみ分けを促し、リスクの低減を狙う。市は今年度中の策定を目指しており、武田次長は「今回の拓勇地区の事例を教訓にしたい」としている。

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 今回、目撃現場近くの拓勇小、拓進小、青翔中は市教育委員会を通じて苫小牧署や市環境衛生部の動きなどを把握し、児童生徒の安全確保に努めた。

 市教委は学校のヒグマ対応マニュアルを作っていないが3校とも登下校時間を合わせて複数人での通学を促したり、通学路に教員が立ったりした。拓進小の毛利毅校長(59)は「市教委から情報が入るたび、教員間で共有し各現場では落ち着いて対応ができた」と振り返る。

 ただ、学校によっては見守り活動に向かう教員にクマよけのスプレーや鈴を用意できなかったり、放課後に校区内の別の公園で遊ぶ子どもがいたりと問題点も見つかった。

 市教委は3校の対応を校長会で報告する機会を設け、全小中学校で課題を共有。他地区での出没も想定し、今後の対策に役立てたい考えだ。

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