苫小牧市と千歳市にまたがる樽前山(1041メートル)の登山道「東山コース」の改修工事に伴い、胆振総合振興局は今年度、同コースへの立ち入り制限を初めて行った。近年の登山者は国内外から年3万~4万人に上る中、登山規制の判断はさまざまな反響を呼んだ。同振興局によると、改修工事は年内に完了する予定で、同山周辺の道道と市道の冬季通行止めが終わる来春から、新しい登山道は利用できるという。
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東山コースは、7合目から東側の頂上まで延長約1500メートル。管理する道が1991年度までに丸太の階段やロープの防護柵などで所々を整えたが、長年の雨風などで斜面が削られ、丸太が流されたり、留め具が突き出たりと劣化が進んだ。道は2023年度から2カ年で、初の改修工事を実施している。
初年度は、溶岩ドーム周りの外輪山の一部で、防護柵のロープやくいを新調。24年度は7合目駐車場に工事車両を入れ、資材を保管しながら残りの改修工事を本格化している。このため道は24年度、安全対策で東山コースの立ち入りを禁止した。
当初は、もう一方から頂上を目指せる「お花畑コース」に登山者を誘導する考えもあったが、東山コースに比べて道幅が狭く、貴重な高山植物を踏み荒らされる懸念があるため、関係機関が協議した結果、今年度中は登山自粛を促す対応で一致した。
自粛要請としたのは、東山コース以外の登山道は管理者が明確でなく、自己責任で登山は可能なため。ただ、市は7合目に車で行ける市道の今季開放を見送り、同振興局は道道沿いに「登山禁止」を多言語表記した看板を設置するなど、登山者の理解を求める形を取った。
樽前山火山防災協議会の火山視察を兼ねた合同登山や、環境省による同山に本来生息していないコマクサの除去作業など、公的な活動は例年通り実施されたが、一般登山者は大幅に激減したとみられる。
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同振興局によると、改修工事で階段の古い丸太を取り除き、新しいものに代えた他、防護柵のロープも更新した。支笏湖が見下ろせる「見晴台」の老朽化した木製ベンチは撤去し、英語と日本語で表記した案内板も新設。同振興局の徳永昇環境生活課長は「工事事業者も寒い中、一生懸命にやってくれ、無事に完了できそう。多くの登山者の協力にも感謝したい」と胸をなで下ろす。
支笏湖に面するモラップの食堂「カフェランチストア Hoo―Hoo!(ホーホー)」には例年、樽前山の登山者がよく立ち寄るが、オーナーシェフの池野尋隆さん(59)も「登山者は減っていたと思う」と指摘。中には食堂に来て登山ができないことを知った人もおり、苔の回廊など近くの景勝地を勧めて喜ばれたケースも。「別の魅力を発信する機会にもなった」と手応えを語った。
(河村俊之)