新型コロナウイルス感染拡大により臨時休校が長引いたことで、苫小牧市内の中学3年生にも大きな影響を与えている。多くの生徒が高校受験を目指す中、例年であれば春先は進路を選ぶための時間に充てる重要な時期だからだ。さらに学習の遅れや格差も懸念されており、各中学校で懸命の努力が続いているが、生徒からは「入試の出題範囲はどうなるのか」「学校見学会はあるのか」など戸惑う声も上がっている。
(高野玲央奈、姉歯百合子)
◇
啓明中学校(大橋祐之校長、生徒数313人)は当初、5月下旬に進路説明会を予定していた。コロナの影響で5月末まで臨時休校だったため、未開催のまま。例年なら市内の高校教諭らを迎え、各校の特色を生徒に伝える機会も今年は中止になりそう。進路指導主事、真下裕之教諭(40)は「高校を調べるきっかけづくりが行いにくい」と困惑しつつ、生徒に説明する機会を設ける考えだ。
進路を考える場が正式に持たれず、生徒らも学習に身が入りづらいのが現状だ。諸橋壮泰さん(14)は休校前よりも家庭学習の時間を増やしたが「忘れてしまっている部分もある」と頭を抱える。第1希望校も決めかねており、「見学会に参加して学校の雰囲気を見たい」と話す。
樋口友香さん(15)は臨時休校中、塾のオンライン授業を受講してきたが「直接質問できないし、不安は残る」と振り返る。休校で教わらない時間も多かっただけに、入試の出題範囲について「3年生の問題がどこまで出るかで勉強の仕方も変わってくる。情報がほしい」と訴える。
休校の長期化は指導者側にも課題を突き付ける。新型コロナの影響で部活動の各大会は、体育系、文化系を問わず相次いで中止になったため、推薦入学の推薦者を決める判断材料を失うことに。真下教諭は部活動の面では「昨年度までの実績が中心になると思う」とし、普段の生活や授業態度なども見ながら「子どもたちの頑張りを評価材料にしたい」と話す。
◇
緑陵中学校(荒川歩校長、生徒数281人)は分散登校中から、高校受験を見据えた学習を展開。3年1組は5月22日、英語の授業でCDを使ったリスニング問題を出題。生徒が数人ずつのグループに分かれ、解き方を話し合う場面もあった。家庭学習ではできなかった内容に、生徒たちは目を輝かせて取り組んだ。
家庭学習用に配ったプリントも、問題を解きながら英単語の読み書き力や、文法の理解度などを自分で確認できるような構成にした。仮にこの先、再度の休校になっても、生徒が自宅で受験勉強を効率的に進められることを目指し、教諭が自作した。
庄田伊吹さん(14)は「将来は教育関係の仕事に就きたい。休校中も毎日4時間以上勉強するように心掛けた」と話す。一方で「独りで勉強していたら、本当にこの内容で受験に対応できるのか不安だった」と明かし、「先生の話を聞けるので、授業はやっぱりいい」とほほ笑んだ。
同校も生徒が早くから将来について考えられるよう、3月に三者面談を企画していたが、休校で中止に。荒川校長は「生徒は心構えができていないまま、受験勉強をスタートさせなければならない。この状況に不安を抱いている生徒も多いと思うので、心のケアに努めたい」と強調する。